日本企業の参加呼びかけ リッポー会長、東京で講演

 インドネシアの大手財閥リッポー・グループのモフタル・リアディ会長(89)は21日、東京都内のホテルで講演、「インドネシアのこれまでの発展は日本との良好な関係から」と述べると同時に、今後の事業分野として、地方開発、医療、教育に力を入れる考えを示し、日本企業の参加を呼び掛けた。同国の企業、とりわけ華人系財閥のトップが日本で一般向けに語り掛けるのは異例で、日本企業の「出超」状態が続いていた両国の経済関係に新風を吹き込んだと言えそうだ。 

 同会長は日本経済新聞に1カ月連載コラム「私の履歴書」を掲載中。1951年に22歳で創業してから自らの事業拡大の軌跡をつづっている。この機会に日本の経済界にあいさつの意味を込め「リッポーグループ:成長の軌跡と未来」と題し、同新聞主催の講演会で約1時間にわたって話した。インドネシア経済への関心を反映し、事務局によると聴講希望者は定員150人の4倍余りに達した。
 金融業を中心に発展した同グループは日本企業では大手金融機関とさまざまな業務関係を構築してきた。最近では三井物産との電子商取引(EC)事業、三菱商事などとのジャカルタ特別州郊外での大規模都市開発プロジェクト、日本国内での医療、高齢者介護事業など多くの事業に乗り出している。
 同会長は日本について60年代に初めて訪問して、秩序だった社会に強い感銘を受けたと述懐述顧した。子どもたちが親の言いつけを守り、食事をきちんとすることが印象的だったとしたうえで、日本企業が約束を守りきちんとした仕事をすることに高い評価を示した。
 経営者としては読書好きで、アダム・スミスやマルクスなど4冊の世界の古典や最新の重要な経営書を読んでいるほか、経済がグローバリゼーションの時代に入るという国際的な視野を踏まえてグループ経営に当たっていると述べ、中国の情報技術企業集団アリババ・グループのジャック・マー代表と、世界のデジタルエコノミーをめぐって朝から晩まで13時間にわたり意見を交換したことも明らかにした。

■習近平氏とも知己
 講演のあとの、私の履歴書を担当した日本経済新聞編集委員との対談では、クリントン元米大統領や習近平中国国家主席とはそれぞれ就任前からの知己であることを明らかにした。2人の共通点は「謙虚であること」と述べると同時に、米国と中国は「けんかはしても結局は仲良くなるだろう」と楽観的な見通しを披露した。
 また、日本企業の見方について「中国の人に、インドネシアでの事業がきれいに進んでいる秘訣(ひけつ)について聞かれたときは、日本企業に頼んでいるから、と答えました」と述べ、今後の各種事業展開に当たり日本企業に期待していること示唆した。

■日イ関係に新風
 日本とインドネシア民間企業の関係は、これまで日本からの一方通行。大手企業・財閥グループで日本に本格拠点を持ち、紙製品を売り込んでいるシナールマス・グループが目立つだけ。日本商社がインドネシアで買い付けて日本に輸出するため現地企業は日本に進出する必要がないうえ、インドネシアに進出した日系企業自身が日本向け輸出を手掛けているためである。今回のモフタル・リアディ会長の講演はそうした関係に新風を吹き込むものとも言える。(小牧利寿、写真も)

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