日イの大学が共同研究 北スマトラ州 寄生虫感染を調査
北スマトラ州トバ湖周辺でサナダムシの一種「アジア条虫」の感染者が多数いることがインドネシアと日本の大学による共同研究で明らかになった。共同研究チームは2017年末の3日間、トバ湖北東に位置するシマルングン県シラウ・カヘアン郡内の7村で住民調査を実施。調査住民180人の大半にあたる171人がアジア条虫の感染者だった。感染者がこれほど集中して見つかるのは世界的にみてもまれといい、世界保健機関(WHO)に調査を報告する。
共同で研究を進めるのは日本の旭川医科大、京都大、山口大とインドネシアのウダヤナ大(バリ州)、ブラウィジャヤ大(東ジャワ州)、サリ・ムティアラ・インドネシア大(北スマトラ州)、北スマトラ・イスラム大(同)、メソディスト・インドネシア大(同)。
日本側代表で、インドネシアでの条虫に関する研究調査を1996年から行ってきた旭川医科大の伊藤亮客員教授(71)によると、トバ湖内のサモシル島では70年ごろからアジア条虫感染者が確認されていたが、2006年以降は、患者が報告されず消滅したと考えられていた。
今回の調査は14年ごろ、同郡でアジア条虫感染者が3人みつかったことをきっかけに行われた。感染した171人は10歳から70歳までおり、アジア条虫は30年以上体内で生き続けることもあり、感染時期は特定できていない。
伊藤客員教授はバリ島やスマトラ島で寄生虫病対策を行っており、「(アジア条虫の感染は)調査されていないだけで、豚肉の生食を好む住民が住んでいる他の地域にも分布しているかもしれない。貧しい地域には寄生虫がはびこっている」と話す。
アジア条虫は、人に寄生する寄生虫で、豚の肝臓で発育、生食や不十分な加熱状態で肉を食べることで感染する。豚は人間の排泄物を経口摂取することで感染する。白色で、幅約5ミリ、長さは大きいもので10メートルもある。サモシル島を含め、トバ湖周辺にはキリスト教徒のバタック人が住み、豚肉を食べる習慣があることから感染が広がったとみられる。中国、台湾、韓国、インドネシア、フィリピン、タイなどのほか、日本でも感染が確認されている。
アジア条虫は薬を飲めば治るもので研究チームは、WHOにアジア条虫の駆虫薬を提供するよう要請している。(上村夏美)