【スラマットダタン】新たな局面への挑戦 三菱東京UFJ銀 江島大輔さん ダナモン出資インフラ融資
三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店長に江島大輔さんが就任した。地場系ダナモン銀行への出資やインフラ向け融資の増加など新たな局面を迎える同支店の舵を取る。「新しい仕事がたくさんある。(辞令に)びっくりしたけど、うれしく感じた」と意欲を燃やす。
銀行員生活の半分を海外で過ごしてきた江島さんは、直近ではシンガポールに駐在し、アジアオセアニア営業部で非日系企業向けの融資案件などを担当。東南アジア諸国連合(ASEAN)とインド、オセアニアの企業の成長を広い視野で見てきた。総じて過去3年間は金利の低下が進むなど「難しい局面だった」と振り返る。その中ではインドネシアは「伸びが安定して高かった」と話す。
同行が世界中で持ち味を発揮している業務の一つが、インフラなどの案件ごとに組むプロジェクト融資だ。三菱UFJグループ全体の2017年のプロジェクト融資の組成総額は121億ドルで6年連続で世界首位。
プロジェクト融資以上にインドネシアで増えているのが、発電所や高速道路建設などインフラ事業を背景にした企業相手の融資だ。マンディリなど大手地場銀行との協調融資組成も進められてきた。「国鉄(KAI)などでは10年以上の長期スパンの融資が実施されている。資金ニーズという点ではASEANの中でも活発だ」と説明する。
■買収でシナジー発揮
17年12月に発表したダナモン銀への出資、買収計画。狙いは規模が拡大する国内の個人や中小企業向けの取引基盤を固めて、総合的な金融サービスを提供していくことだ。江島さんは陣頭指揮を執る。「例えば、日系のお客さまのサプライヤーや販売先の地場の中小企業にも資金ニーズがある。トータルでサービスを提供していこうと思うと、支店の現在のスペックでは対応できない面がある」と買収の意義を話す。「課題はシナジー(相乗)効果をどう見つけるか。お互いに経験がない中でアイデアを現実にどう近づけるか。議論を深めていく」と抱負を話す。
銀行の貸し出しの伸びが鈍いなどの状況はあるが「これほど大きく伸びる余地がある市場は他にない。ますますやれる仕事が増える」と前向きだ。拠点がある東ジャワ州スラバヤ市を訪れ、インドネシアの新たな面を感じたばかり。行きたい場所はたくさんある。
支店50周年の年に50歳を迎える。「いろいろな産業やそこで働く人に関われることが魅力」と感じて入った銀行で「取引先が海外進出している中で、自分も海外に出て視野を広げたいと思った」と振り返る。
本店でグローバル人材向けの人事制度を作る業務に携わってきた。銀行員に必要な資質を聞くと「入行してからも法務や税務などを勉強しなければならない。裏方仕事を苦にせずこつこつ、真面目にやれる人が向いている」と答える。
一方で「銀行にずっといると、そうしたことにとらわれがち。外に出ていろいろなことを見聞きすることを大事にしていきたい」。穏やかな語り口からも熱意がにじみ出る。(平野慧、写真も)
◇ えじま・だいすけ 68年兵庫県西宮市生まれ。49歳。91年東京大学経済学部卒、三菱銀行(当時)入行。ニューヨーク支店長代理、国際企画部兼人事部グローバル人事室長、アジアオセアニア営業部副部長などを経て、18年1月から現職。趣味は学生時代に熱中し、米国やシンガポールでも楽しんだアイスホッケー。