イ拠点にブランド浸透 時期の分散、地方への分散へ JTB 高橋広行社長
JTBが2017年3月、パノラマ・グループと合弁事業を立ち上げてから約1年。来イしたJTBグループ本社(東京都品川区)の高橋広行社長に、インドネシア市場の展望について聞いた。
――パノラマとの提携から1年。
高橋社長 パノラマは、非常にアグレッシブで行動力がある企業。相互にリスペクトし協力できる親和性の高いパートナーとめぐり会えた。パノラマから日本の受け入れ関連部署に、価格や宿泊場所の設定などの提案も始まっている。受け入れ側の論理だけでなく、インドネシアの趣向も取り入れた商品作りの動きも出ている。今後は、日本とインドネシアの関係のみならず、世界中のJTBとの絆を強め「世界発、世界着」の協力体制を深めていきたい。
――インドネシアをどうみるか。
世界第4位の人口で、平均年齢は29歳と若い。経済成長率5%前後と伸びている中で、今後の人口ボーナスを見込み、JTBは三つの視点でインドネシア市場を考えている。一つ目は、前年比30%と大きく伸びた訪日市場。二つ目は、日本からインドネシアへのアウトバウンド市場。三つ目は、インドネシアから欧州など海外への旅行需要だ。
――訪日旅行市場は。 日本は、20年までに外国人訪日旅行者数4千万人という目標を掲げている。インドネシアは日本政府観光局(JNTO)の調査で、17年の伸び率が世界第4位と高く、JTBとしても期待している市場の一つ。課題とされてきたムスリム対応なども、宿泊施設や飲食店など受け入れ態勢はかなり進んできたと認識している。
――JTBとしての取り組みは。
訪日旅行者が増える中で、「時期の分散と地方への分散」を考える必要がある。昨年、冬の北海道にチャーター便を出した。インドネシアなどの東南アジアの国々の人々にとって雪というのはやはり特別な意味を持つ。繁忙期を避けた戦略の一つに当たるが非常に評判がよかった。
また、旅行形態がグループから外国人個人旅行(FIT)へと移行する上で、公共交通機関の整備されない地方都市では外国人の移動は難しい。JTBは、1人から参加できる「シート・イン・コーチ」という観光乗合型バスツアーの取り組みを導入している。日本国内各地にネットワークを持つJTBとしてこのような商品を通じ、FITなどの個人需要の取り込みも含め地方への誘致拡大へと取り組んでいきたい。
――今後の戦略は。
一般的には、初心者がグループツアーで訪れ、その後FIT化していく。インドネシアの人口ボーナスを考えると、現在の初心者がリピーターに移行しても、初心者層は減るのでなく、その部分に新しい初心者層が入ってくる。移行ではなく全体的に全ての層が増えていく時期がしばらく続く。インドネシア国内旅行者も、ファミリー層が豊かになれば増加していく。その頃には、バリだけでなく、観光省が提唱する次代のバリとなる10の新しい観光地などのインフラも整備され、国内旅行市場も活発化することが考えられる。
JTBは、インドネシア国内で知名度のあるパノラマ・グループと提携し、合弁会社パノラマJTBを設立した。JTBの持つノウハウとグローバル・ネットワークを持って、この国で最大限に相乗効果を発揮するには、今後、JTBブランドをこの国で周知、浸透させることが重要な課題。この国の10年後、20年後はどうなるか、アウトバンド、インバウンド、国内旅行、どれをとっても楽しみな市場だと思う。それに向かって先手を打っていきたい。(太田勉、写真も)
◇ たかはし・ひろゆき 79年関西学院大学法学部卒、日本交通公社(現JTB)入社。2010年4月JTB執行役員旅行マーケティング戦略部長、12年6月同取締役(兼執行役員)旅行事業統括。同常務取締役(兼執行役員)、JTB西日本代表取締役社長を経て、14年6月から現職。60歳、徳島県出身。