CO2 年25万トン削減へ 日イ協力4年、30案件始動
日本がインドネシアに低炭素技術を提供し、それによって削減できた温室効果ガス排出量を日本の実績に組み込める「二国間クレジット制度」(JCM)が開始から4年を迎えた。太陽光発電など日本の省エネ技術を生かした30件のプロジェクトが進行中で、年間で計約25万トンの二酸化炭素(CO2)の排出削減を見込む。JCMをきっかけに、日イの都市間協力も広がっている。
日イ間では2013年8月の二国間文書に基づき、CO2排出削減を進めてきた。例えば東ジャワ州トゥバンのセメント工場では、セメント焼成で出る廃熱を回収して発電する設備(JFEエンジニアリング製)を導入、年間約12万トンものCO2排出削減を見込んでいる。
日本はこれまでにアジアやアフリカの計17カ国とJCM実施に向けた署名を交わしたが、日本政府関係者は「インドネシアはこの分野でフロントランナー」と口をそろえる。
JCMでは、プロジェクトごとにCO2の排出量を測定して「クレジット」を発行する。西ジャワ州ブカシなどの食品工場に高効率な冷却装置を導入するプロジェクトでは昨年5月、計40トンのCO2排出削減を確認。JCM制度開始以来初めて「クレジット」が発行された。
都市間協力も広がっている。年内に中部ジャワ州スマラン市と富山市、来年にはジャカルタ特別州と川崎市が、新たにJCMに向けた協力関係を結ぶ見通し。担当者によれば、ジャカルタ側は川崎市との協力で、ビルの省エネ化に取り組みたいと意欲を見せており、今後も協力が拡大しそうだ。
開始当初からJCM実施を支援してきた国際協力機構(JICA)専門家の市原純さんは、任務を終え年内に帰任する。4年間を振り返り「環境分野で日イの民間事業者間の関係構築も進んだ。今後、さらなる民間環境協力も期待できる」と話す。
一方、インドネシアではことし、制度変更によって再生可能エネルギーで作る電力の買取価格が引き下げられるなど、JCM実施の障害となりそうな政策も見受けられる。市原さんは「事業者の負担が増えるような政策・規制があれば、次に続くプロジェクトがなくなってしまう懸念もある。解決に向けた努力が重要だ」と指摘した。(木村綾、写真も)