【スラマットジャラン】新たな事業の柱を追求 双日インドネシア 八田吉蔵さん
双日インドネシアの社長を務めた八田吉蔵さん(55)がこのほど、シンガポールに移駐した。在任中はデルタマス(西ジャワ州ブカシ県チカランの複合開発地域)の開発や、参画する発電所事業などさまざまな案件を進めた。2015年6月〜17年10月のインドネシアでの商社マン生活を振り返った。
「会社としては事業を進展させたが、自分自身を振り返り大きな仕事をしたとは思わない」。八田さんは控えめに、静かにそう話す。
双日が85%出資する子会社カルティム・メタノール・インダストリー(KMI)は東カリマンタン州ボンタン市で国内唯一のメタノールプラントを運営している。さらに双日と住友商事が半数ずつ出資する、エルエヌジージャパンによる液化天然ガス(LNG)事業、デルタマス開発の三つが「事業の柱」。今後もインドネシア事業に携わる八田さんは「それに続く4本目の柱を見つける必要がある」と話す。
保険の普及に伴い進歩が予想される医療や、電子商取引(EC)の分野については「可能性がある」。「スマートフォンが日本と比較して一足跳びの早さで普及しており、それに伴いEC市場が拡大している。銀行決済のシステムなどIoT(モノのインターネット)にも商機はある」と語る。既存事業では大手アパレルの委託生産も大きく成長している分野だという。
八田さんは今年度ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)副理事長を務めるなどJJCの活動に深く関わってきた。印象に残っているのは16年9月、税務当局により税務処理上で必要な資格であるPKP(付加価値税課税業者)の商社の登録が突然抹消された事件。
「JJC内でも結束でき、当時の谷崎泰明駐インドネシア大使ら大使館の協力もあり、迅速に対応することができた」と資格抹消の取り消し、通常業務復帰に至った経緯を振り返る。
「米国商工会議所とも意見交換することができた。今後もこうした関係作りを進められれば」と語る。
プライベートではプラブハンラトゥ(西ジャワ州スカブミ県)などでサーフィンを楽しんだ。
思い残したこともある。「サーフィンをしにクルイ(ランプン州)に行った時、大きなチューブ(波が崩れる力が一番大きい場所にできる筒状の空間)に巡り会った。サーファーとして勇気を持って入りたかったが、失敗したら大けがをするかもしれない。そこでためらってしまった」と振り返り、「やっとけばよかったなあ」と笑った。(平野慧、写真も)