動画投稿者に有罪判決 反アホック運動の引き金 禁錮1年6月
アホック元ジャカルタ特別州知事の「コーラン侮辱発言」を切り取った動画を昨年10月、ソーシャルメディアに投稿したとして、情報・電子取引法(ITE法)違反(改ざん・憎悪表現)の罪に問われた大学講師ブニ・ヤニ被告の判決公判で、西ジャワ州バンドン地裁は14日、禁錮1年6月(求刑同2年)の判決を言い渡した。一連のコーラン侮辱騒動に一区切りが付いた形だが、弁護側は控訴する考えを示している。
サプトノ裁判長は判決理由で「被告の行動は人々の不安を引き起こし、行動を反省していない」と指摘。「被告は政治学の講師で、模範となるような行動をしなくてはいけない」と述べた。
ジャカルタ特別州知事選再選出馬の発表直後だった昨年9月下旬、アホック氏はプラウスリブ県で行った住民対話での演説で、「コーランの一節を使って惑わされているから、私に投票できない」などと述べた。
この発言から9日後の10月6日、ブニ氏は「宗教に対する冒とく?」と題した説明文と共に、問題の発言部分を切り取った30秒間の動画をフェイスブックに投稿。その際、説明文でアホック氏の発言を引用したが、「コーランの一節を使って惑わされている」という部分の「使って」という単語を省き「コーランの一節で惑わしている」と記載した。
この投稿文がソーシャルメディアで拡散されたことが引き金となり、イスラム強硬派団体・イスラム擁護戦線(FPI)を中心としたアホック氏への大規模な抗議運動が展開された。
アホック氏は宗教を政治利用する政敵を揶揄(やゆ)する文脈だったとして「コーラン侮辱」の意図を否定したが、イスラム団体が同氏を告発。宗教冒とく罪で起訴されたアホック氏にことし5月、禁錮2年の判決が下った。
19回に及んだ公判で、ブニ氏は投稿した30秒間の動画は「自分が編集したものでない」と主張。フェイスブックのアカウント「メディア・NKRI」に投稿された動画をリンクしただけだと反論した。動画は州政府がユーチューブで公開した1時間48分の公式動画の一部を切り取ったもので、判決ではブニ氏も「州政府の動画を無断で編集、転載した」と指摘された。
ブニ氏は判決を受け、地元メディアに「私は何も間違ったことはしていない」と主張、弁護側は控訴する考えを示している。
この日、地裁周辺ではFPIなどイスラム団体の構成員らが集結。反アホック運動を率いた1人、アミン・ライス元国民協議会(MPR)議長らが被告を擁護する演説を行った。
公判で検察側は収監中のアホック氏にも証人として出廷を打診したが、同氏が姿を見せることは最後までなかった。8月の公判ではアホック氏の供述調書が読み上げられ、「(動画の)投稿によって、多くの人から宗教侮辱したと見なされ、中傷された」「(昨年)11月4日の大規模デモで脅威を感じた」などと同氏の心境が明かされた。(木村綾)