視点を変えた観光誘致を 日系企業の活力生かし スラバヤ市と東ジャワ州 谷昌紀総領事に聞く
4月から駐スラバヤ総領事を務めている谷昌紀さん(60)。インドネシアでの駐在経験が長い谷さんに、東ジャワ州と国内第2の都市であるスラバヤ市について聞いた。インフラ整備の重要性や視点を変えた観光誘致を強調するとともに、日系企業の活力を生かして「インセンティブのある仕組みづくり」を提言した。
スラバヤ市とその周辺に進出する日系企業は現在約150社あり、ゆるやかではあるが増加傾向にある。在留邦人はスラバヤ市を中心に900人弱いる。
スラバヤの街並みについて谷さんは「オランダ時代の建物をリノベーションして活用した美しい街」と評価する。「市民からのアイデアを募ると、より良い街づくりにつながるのではないか」と提案した。
渋滞も増えてきた同市内。既存の路線を再利用する路面電車の建設案があるが、谷さんは「今、どの地域のどこに路線が必要なのか調べ、観光というよりは、市民の新たな足になるよう作ってほしい」と話す。
■輸送コスト解決を
東ジャワ州では高速道路の建設が進んでおり、スラバヤ市から日系企業が多い同州パスルアン県のピエール(PIER)工業団地へは、これまで1時間半〜2時間ほどかかっていたが、高速が開通し1時間ほどに短縮されたという。
一方、「スラバヤから日本へ向かう船の直行便は1週間に1本と少なく、利便性が悪い。ジャカルタへ陸路で運び、ジャカルタの港から日本へ送る企業もある」という。「インドネシアは国内で、輸送コストの問題を解決する必要がある」と強調。また、港湾などで手続きの簡素化を進めるなどマネジメント面の改善も必須だと話した。
■遺跡ツアー
観光について谷さんは「『海や海岸が美しい』というアピールでは勝負できない。視点を変え、まだ活用されていない観光資源を利用し、情報を発信することが重要」と説明。例として、スラバヤ市とスラマドゥ橋でつながるマドゥラ島で、伝統的な牛の競争を見るツアーや独特な絵柄のバティック、塩田や塩などを活用できると提案する。
さらに、モジョクルト県を中心にマジャパヒト王国の遺跡が残る東ジャワ州では、野ざらしの遺跡が点在しており「遺跡ツアー」を実施したいと意気込む。「まずはジャワの遺跡を研究していた日本人の専門家を呼び、ジャカルタやスラバヤに住む日本人向けに遺跡ツアーをする。それを観光省の人たちにも見せ、同州でやってもらえるようにしたい」と話した。
またツアーでは旅行代理店などと協力したいという。
「もうけがないと何事も継続、発展していかない。日系の民間企業とともに、インセンティブがある仕組みを作り上げることが重要。日系企業の活力で周辺の現地企業も巻き込んでいってほしい。そのために官民で協力していきたい」と話した。(毛利春香、写真も)
◇たに・まさき 関西大経済学部卒。82年に外務省入省。インドネシア大学とガジャマダ大学で研修後、数回のインドネシア駐在を経て14年、在マカッサル領事事務所長。17年、駐スラバヤ総領事。大阪府出身。