安全に学べる校舎を ブカシ県の特別支援学校 草の根でバリアフリー化 日系企業は車椅子を寄贈
西ジャワ州ブカシ県スラン・バル郡にある公立ブカシ県特別支援学校で11日、日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」でバリアフリー化の改修工事が実施された校舎の引き渡し式が開かれた。式では、日系の民間団体と企業が協力して用意した車椅子も贈られ、日本の官民が連携して障がいを持つ子どもが安全に学べるよう支援した。
同校は2012年に設立され、小学生〜高校生の児童・生徒約70人が通っている。校内には以前からスロープがあったが、傾斜が急で手すりも高く使いづらかった。7月に始まった改修工事では、傾斜を緩やかにし、手すりの高さも車いすに乗る子どもが使いやすい、高さ80センチに変更した。さらに、車いす利用者も使用できる多目的トイレも整備した。
これまで車椅子に乗る 子どもたちにとって、校内のトイレを使うことは難しく、自宅で朝にトイレに行ったきり帰宅まで我慢したり、授業時間が長い日はおむつを使っていた児童・生徒もいたという。今後は多目的トイレの使い方を含めた、公衆衛生のセミナーなども実施していく。
同校のガオス・マスプラジャ校長によると、校舎改修を西ジャワ州政府に申請するなどしたが、すぐには認められず、改善できなかったという。
今回、日本政府の援助で念願のバリアフリー化が実現し、同校長は「子どもたちにとって、とても使いやすく居心地の良い学校になった。この学校がモデルケースになり、ブカシ県や他の学校にもバリアフリー整備の大切さが広がり、実施されていくことを願っている」と笑顔で話した。
校舎引き渡し式では、児童・生徒用の車椅子3台も贈られた。寄贈の中心的役割を果たしたのは、デンソーが設立したNPO法人「アジア車いす交流センターインドネシア」(事務局・北ジャカルタ、WAFCAI)。日本政府に草の根無償支援を申請するとともに、日系企業に協力を呼び掛けてきた。
これに応えて、福祉用具販売などを手がける豊通オールライフが日本製車いす20台を提供し、輸送費は郵船ロジスティクス・インドネシアが支援した。さらに豊田自動織機インドネシアが、学校で実施する啓発セミナー教材の用意など、スポンサー役となった。
式には、支援に携わった在インドネシア日本大使館の安藤重実参事官やブカシ県社会局リハビリ課のラフマット・エリカ課長、デンソー・インドネシアの亀苔武之社長、郵船ロジスティクス・インドネシアの川田和男社長らが出席し、改修された校舎で車椅子に乗る子どもたちを見守った。
2015年からジャカルタ特別州や西ジャワ、バンテン両州などで、車椅子提供や学校のバリアフリー整備を続けるWAFCAIの福原春菜さんは「ブカシ県はジャカルタに隣接する県の一つだが、安全に学校に通うことができない子どもたちがいる。ゆくゆくはインドネシアの教育文化省が全ての学校をバリアフリー化できるようになれば」と語った。
同大使館によると、校舎バリアフリー化を目的にした草の根無償支援は、ブカシ県・市、バンテン州タンゲラン市の特別支援学校と障がい者支援施設計3校・施設でも実施されている。ブカシ特別支援学校を含む4校・施設の支援総額は約8億3千万ルピアで、バリアフリー環境の施設改修や整備に加えて、設備の使い方や車椅子のメンテナンス方法などの研修も実施する。(毛利春香、写真も)