ムハマディヤ研究集大成 インドネシア語で出版 中村千葉大名誉教授

 インドネシアのイスラム研究の第一人者である中村光男・千葉大学名誉教授(83)が、約100年間のムハマディヤ運動に関する研究をまとめたインドネシア語の本「Bulan Sabit Terbit di Atas Pohon Beringin」を出版した。中村氏は「イスラム世界と非イスラム世界の相互理解や共存を促進していくうえで、ムハマディヤの存在は極めて大きい」と強調する。

 本は2012年にシンガポールで出版した英語の著書のインドネシア語版。ムハマディヤは1912年にジョクジャカルタで、イスラムの近代化を掲げる団体として発足、その後国内第2のイスラム団体へと成長した。中村氏は米コーネル大学在学中の1970年以来、ジョクジャカルタ特別州コタグデに滞在して現地調査するなど研究を続け、同書では1910〜2010年のムハマディヤ運動についてまとめた。
 1970年当初のコタグデには二つしかなかったモスクが、2010年には約50に増えた。中村氏は長年のインドネシア研究を振り返り、「個人生活でも社会生活でもイスラムの実践が強調され、イスラム化が進行した」と分析する。
 災害や難民支援にも及ぶようになったムハマディヤ運動については「イスラムの立場からの人道的な社会福祉活動」と位置づける。
 同書はムハマディヤ大学ジョクジャカルタ校が新設した出版局からの出版第1号で、ムハマディヤの機関誌スアラ・ムハマディヤとの共同出版となった。
 6日には、中央ジャカルタのムハマディヤ本部で出版記念会が開かれた。ムハマディヤのハエダル・ナシル議長も駆け付け、「この本を通じてムハマディヤ運動の歴史を読み返すことができる。われわれだけでなく、若い世代にとっても重要な本だ」と賛辞を贈った。
 中村氏は現在のムハマディヤについて「有力組織の一つとして、インドネシアのイスラムを国際的に広めていこうとしている」と話す。今回の本も「特に海外に住むインドネシア人やマレーシア人、100以上あるムハマディヤ大学の学生に向けて、出版したいという要請があった」という。
 同氏はことし、日本の文化勲章にあたる文化功労賞をインドネシア教育文化省から受賞、9月28日に同省で授賞式があった。同書の出版を含む、長年にわたるイスラム研究の功績が受賞理由の一つになった。同省のロビーには現在、中村氏を含む受賞者47人を紹介するパネルが展示されている。
 活動は研究にとどまらない。昨年始まった、東南アジアの若手ムスリムを日本に招いて日本の青年との交流を促す国際交流基金のプログラム「東南アジア・ムスリム青年との対話」(TAMU)に携わるなど、イスラムと日本の相互理解促進にも力を入れていきたいとしている。
 本の問い合わせはスアラ・ムハマディヤ(電話0274.376.955)へ。(木村綾、写真も)

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