ボゴール駅に高層住宅 駅前開発計画 通勤客で駐車場満杯
首都圏専用電車(KRL、コミューター)網南端の西ジャワ州ボゴール駅前で大規模な開発が計画されている。通勤客のオートバイ駐車場が並ぶ駅前に高層住宅や商業施設を配置し、駅を中心とする公共交通指向型開発(TOD)計画で、政府は通勤客の利便性向上、深刻化する周辺の渋滞緩和を目指す。
国鉄(KAI)と西ジャワ州ボゴール市は9月、ボゴール駅周辺でのTODに関する覚書(MOU)を結んだ。事業は国営建設ワスキタ・カルヤの子会社ワスキタ・カルヤ・リアルティが請け負う。国鉄が所有する駅周辺6.6ヘクタールの国有地で開発を進める。
事業予算は1兆6千億ルピアで、高層住宅や商業施設を建設。8棟・約2千世帯分のうち約500世帯分を低所得者層向けの公営高層住宅(ルスナミ)に充てる。2019年10月の完成を目指す。
国鉄によるとボゴール駅とジャカルタ特別州間を移動する乗客は1日約60万人。ボゴール駅西側の敷地内には、国鉄子会社が経営する2階建ての立体駐車場があり、車約360台、オートバイ約4千台を収容できるという。
駐車場の係員デデ・ヤトナ氏によると、電車通勤のため、ボゴール近郊にある自宅から車やオートバイで来る通勤客が利用する。「通勤ラッシュの午前5時〜11時、帰宅ラッシュの午後6時〜9時は駅周辺は大渋滞する」と話す。
一方、駅前の道路沿いには、約200メートルにわたり、住民らが個人で営むオートバイの駐車場が10カ所ほど並ぶ。駅内の駐車場の利用料金8千ルピアと比べると、利用料金は3千〜4千ルピアと半額以下。どこも通勤者のオートバイで満杯だ。
デデ氏は「駅まで遠い上に渋滞するため、毎日ジャカルタまで片道4時間以上かけて通う人もいる。駅前に高層住宅ができれば交通費も節約でき、住みたい人はたくさんいると思う」。
駅の北側でワルン(食堂)を営むシスカさん(52)は「駅から5〜10キロ圏内にはコス(下宿)も多いが、戸建てに家族で住み、時間をかけて駅まで通う人が多い」と話す。
駅から乗り継ぐ交通機関は、オンライン配車サービス「ゴジェック」や「グラブ」などのバイクタクシーや、アンコット(乗り合いバス)、ベチャ(3輪の人力車)など。
駅周辺は伝統市場などが並ぶジュンバタン・メラ地区で、ショッピングモールなど新しい商業施設は見当たらない。2009年に改修されたボゴール駅の新駅舎とは対照的に、駅周辺は昔ながらの街並みが残る。
駅を中心とする再開発計画は、ボゴール大統領宮殿をよく利用するジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の掛け声で始まった。年内に首都圏13駅でTOD開発に着手したい考えで、南ジャカルタのタンジュン・バラット駅とデポック市ポンドック・チナ駅では既に建設が始まっている。(毛利春香)