CO2を回収・貯留へ 温室効果ガス削減向け JICAなど調査

 天然ガス田などから出る二酸化炭素(CO2)を大気中に放出せず回収し、圧入して地中に貯留する「CCS」と呼ばれる技術がインドネシアで注目され始めている。現在は研究・調査段階だが、温室効果ガス対策を迫られているインドネシアは、東南アジアではまだ活用されていないCCSの導入を進めたい考えだ。 

 CCS導入については、日本の国際協力機構(JICA)や科学技術振興機構(JST)と京都大学、バンドン工科大学(ITB)が中心となり、国営石油ガス・プルタミナが所有する中部ジャワ州ブロラ県グンディガス田で2012年から基盤となる研究・調査するパイロット事業が進められてきた。
 同地では13年12月から天然ガス生産を開始し、同州スマランの発電所が使用している。生産されるガスのうち約20%がCO2で、1日約800トンが大気に放出されているという。
 現在は1日当たり、分離して集めたCO2約30トンを地下800〜1000メートルに貯留し、貯留の状態や漏れがないかなどを確認するため、モニタリングしていく。
 プロジェクトリーダーを務める京都大学の松岡俊文特任教授によると、場所によって差はあるが、インドネシアではガス田でのCO2の含有量が約40%あり、世界的にみても多い。10%以下の日本や中東に比べ、リアウ諸島州ナトゥナの石油・ガス鉱区では70%に上るという。
 松岡教授は「CCSでは、何十万年以上もガスが溜まっていた地中にCO2を貯留するため、地震などが発生しても大気中に漏れる心配はほぼないと考えられている」と話す。
 またプルタミナはCO2削減だけでなく、ガス田などで回収したCO2を、油田の地層に入れ地下の原油と混ぜることで、回収率を上げる技術の導入も進めたいという。松岡教授は「一石二鳥」と説明。「石油の生産を続けると産出量は減るが、実際に取り出せているのは3割ほど。ガス田のCO2を油田で活用して、より多くの石油を取り出すことができる」。米国などでは30年ほど前から実施されているという。
 インドネシアは温室効果ガスについて、対策を講じなかった場合と比較し30年までに29%、国際的な支援が得られた場合は41%を削減することを表明している。

■追い風が吹く
 インドネシアでの同技術の研究は、JICAが発展途上国の大学・研究機関との共同研究を推進する「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の一つ。5日にはブロラ県で研究成果を共有し合うシンポジウムが開かれた。SATREPSとしての同事業は9月で終了するが、インドネシアは日本やアジア開発銀行(ADB)の支援を受けながら、引き続きCCS導入拡大を目指して進めていく。
 松岡教授は「日本が温室効果ガス排出量の相殺に必要なカーボンクレジット(二酸化炭素排出権)として、インドネシアから購入すれば、両国のCO2削減量に貢献できるだけでなく、インドネシアはお金も得ることができる」と説明。「今はタイミングが非常に良く追い風が吹いている」と話した。
 SATREPSの同事業には日本からは早稲田、九州、秋田各大学と、深田地質研究所、石油資源開発(JAPEX)などが、インドネシアからはエネルギー鉱物資源省オイルガス総局、新エネ・再生エネ総局などもそれぞれ協力している。(毛利春香)

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