【火焔樹】 全国統一卒業試験
小学六年生の息子は二〇〇八年より全国で実施されるようになった統一卒業試験を五月に控えている。科目は国語、算数、理科。不合格者は再試験を受けるが、それでも合格しなかったら小学校は卒業できない。
試験はもちろんほかにもある。バリ州教育局の試験が三日間、デンパサール市の試験が四日間、こちらで言うところの実習科目、体育、美術、宗教、英語、バリ語、アラビア語などの試験が六日間、学校自身が用意した試験が三日間。最後が卒業の是非を決める三日間の統一試験だ。
合格者数は学校の評価につながるため、試験に備えた特別授業が放課後毎日行われ、生徒は模擬試験を何度も受ける。マークシート式の答案用紙にも慣れなければならない。試験当日は不正を防ぐためか、監督にはほかの学校の教師があたることになっている。
統一試験は初等義務教育の全国的な学力の底上げが目的だが、十分な教育施設のない地域でも同じ試験を受けさせ、進学を拒むのは教育の機会を奪うという批判がある。二年続けて不合格だった小学生が学校に来なくなったという話も教師から聞いた。
「試験に落ちたらまた六年生だからね」。毎日のように息子に話しているが、本人はとりわけ好成績でもないのに「大丈夫、合格に決まっている」といたって呑気だ。不合格の結果に「どうせ自分は勉強ができない」と意欲をなくしてしまうのが怖い。
さて、学校が用意した国語の模擬試験にこんな問題があった。「(商品の写真の下に)以下の文章から正しいものを選べ。A―ヤクルトを飲むとやせる B―ヤクルトは強靭な体を作る。C―ヤクルトは家族の健康飲料。D―ヤクルトはエネルギー補給のために飲む」(北井香織)