【林哲久の為替・経済ウィークリー】 インドネシアに提言 投資誘致まだ課題も
最近、インドネシアを視察される方々からの質問として、「情報としてはインドネシアの成長性や潜在力を理解することはできる反面、本当に大丈夫なのか、実態が伴っていないのではないか」との疑問が多い。
実際に、インドネシアは投資適格に格上げされ、長年の懸案であった土地収用法も昨年末に可決されたが、実際の施行細則の策定にはあと一年を要すると言われている。また、今年に入ってから顕在化した労働争議の問題は、行き過ぎた地方自治体への権限委譲と国の行政との権限配分のあり方にもかかわる問題も含んでおり、今後一層、インドネシアが投資誘致を行う上での課題も多い。
実際、昨年一年間でのインドネシア企業による海外直接投資は七十億ドルに達し、前年比で三倍近い急増となっている。国内の法的整備の不透明感や治安対策の遅れなどが海外への投資を誘発しているとも言われている。
また、中銀は、景気てこ入れのため、一段の金融緩和を実施する意向を示しているが、調達コストの低減の恩恵を受けているのは、主に中銀であり、一般消費者への貸し出し金利の引き下げにつながっているかは疑問である。
現在、続々進出されている日系企業にとっては、こうしたインドネシアが抱える課題も勘案した上で、それでも日本国内市場の縮小を考慮すると、当地に進出せざるをえないと言うのが実情であろう。
今週は、インドネシア政府への激励をこめて、やや辛口なコメントを述べさせていただきました。
主要通貨については、日銀は、一%のインフレ目標を立て、一段の金融緩和を実施することを発表したことで、ドル円相場は、三カ月ぶりに、七九円台まで上昇した。しかし、これから期末にかけては、機関投資家の利益回金の円買いが出やすい時期に当り、本邦輸出企業も、今年の社内レートを八〇円近辺に設定する企業が多いことから、今後も旺盛な円買い需要がドルの上値を抑えることが想定され、ドル円相場の八〇円台乗せは容易ではなかろう。(三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店・林哲久)