「暴力はもう終わり」 強硬派FPIに抗議運動 政府も厳重措置を検討

 宗教を盾に暴力行為を正当化し、治安機関との癒着で看過されてきたイスラム強硬派団体イスラム擁護戦線(FPI)に対する抗議運動が高まっている。テロには厳重措置を講じながらも、増加する一部のキリスト教徒やイスラム異端派への襲撃事件を放置してきた政府も、市民団体らが突き付けた非難の声にようやく応じる姿勢を示し始めている。

 FPIは強硬派を自称し、売春や麻薬の温床になっているとしてディスコやバー、カラオケ店などの歓楽施設を襲撃。近年は、バンテン州チクシックのイスラム異端派アフマディアの信者虐殺事件や西ジャワ州ブカシのキリスト教徒襲撃事件を起こし、欧米諸国からも信教の自由に反する行為と批判されてきた。
 一連の暴力事件に対し、司法当局も厳罰を下すことなく、キリスト教徒などインドネシアの少数派の間で現政権に対する不信感も高まる中、今月十一日、中部カリマンタン州パランカラヤで、地元ダヤック人団体が「宗教対立を引き起こす恐れがある」としてFPI幹部の現地訪問を拒否。これを支持する運動がジャカルタやジョクジャカルタなど各地で始まった。

■ 最大団体も警告
 インドネシア最大のイスラム団体、ナフダトゥール・ウラマ(NU)の青年団アンソールは、FPIを含む暴力を行使する団体を解散させるよう政府に要求すると表明。
 ガマワン・ファウジ内相は、今後社会不安を引き起こした場合、FPIを解散させると警告。違法行為には、スハルト政権下で言論弾圧に悪用されたため、近年運用されていなかった「大衆団体規制法(一九八五年制定)」を適用すると明言した。
 先月には、内務省がアルコール飲料の販売規制条例を撤廃したとFPIが誤解し、中央ジャカルタの内務省庁舎を襲撃。警備員の詰め所のガラス窓を割るなどした事件が発生しており、政府が市民の抗議運動に呼応し、厳重措置を示唆するきっかけにもなった。

■ 閣僚に謝罪表明
 こうした動きに対し、FPIのムナルマン広報担当は、ユドヨノ大統領の出身母体の民主党が一連のFPI抗議運動の背後にいると指摘。党幹部が関与した汚職事件で党の支持率が低下する中、FPIの処遇を話題にして汚職疑惑から国民の関心を逸らそうとする意図があるとし、中部カリマンタンでのFPI幹部訪問への反対運動はダヤック人団体ではなく、汚職事件の被告人が動員したなどと主張した。
 FPIのハビブ・リジック・シハブ代表は、ガマワン内相やスルヤダルマ・アリ宗教相と会談し、メンバーの暴力行為に謝罪を表明するなど、これまでの強気の姿勢から態度を軟化させている。

◇イスラム擁護戦線(FPI) スハルト政権崩壊後の一九九八年十月、特別国民協議会を目前に控え、治安情勢が悪化した当時、国軍・警察が組織した自警団のグループの一つとして発足。治安対策の官製の別働隊として、ヌグロホ・ジャユスマン警視総監(当時)やウィラント国軍司令官(同)も設立に関与したとされている。シャリア(イスラム法)導入を標榜し、賭博や売春の巣窟として、ディスコやバーなど娯楽施設を度々襲撃、反米デモも活発に行ってきた。本部は中央ジャカルタ・タナアバン。国家警察によると、FPIが絡んだ暴力事件は二〇一〇―一一年に計三十四件。

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