コネの時代は終わり? 就職説明会で大行列 大卒増、求人増で混雑 就活、じわり早期化も
16日夕、南ジャカルタにあるスナヤン・シティの立体駐車場。最上階ホールに続く薄暗いフロアに、約500人が行列を作っていた。アジア就職情報サイト大手「ジョブズDB」が開催した就職説明会への入場を待つ新卒者など20代の若者たちで、会場が大混雑したため主催者側が一時的に入場制限を実施した。各地で開催される大規模な説明会の人気が近年、高まりつつあり、これまでコネが幅をきかせていた大手企業への就職機会が学生の間で均等化し始めた。企業側にとってもより有能な人材を探す機会が広がることになる。(岡坂泰寛、写真も)
同社は二〇〇八年に初めて就職説明会を主催。イベント統括担当のウィナさんは「大卒者も企業の求人も同時的に急増。毎年予想を上回る盛況ぶり」と満足げに話す。インドネシアで同社が運営するサイトの登録者は百六十万人を超え、求人情報を見た学生と企業が直接つながる機会が大幅に増えている。
会場中央に陣取った大手不動産業者のブース。採用担当者が「順番待ちの間、この紙を読んでおいてください」と声を張り上げていた。「住宅検査部、営業補佐、電話オペレーター‥」。紙に書かれた求人情報を食い入るように見つめる来場者は、担当者の指示で履歴書の提出や希望職種の登録を次々と済ませていた。
「月収三百万ルピア(約二万六千円)は譲れないライン」。私大を卒業したばかりのフレディー・ビリアントさん(二二)は友人とともに参加。通信大手の数社に求職登録したが「自分の仕事観に合う企業が見つからない」。ため息をつきながらも「求人情報があふれているから粘り強く探すよ」と前向きだ。
主催者発表によると、開催二日間の来場者は一万人を突破。銀行や食品メーカー、製造業、テレビ局などさまざまな業種の企業百九社が参加した。来場者の多くは新卒者で、第八セメスター(大学四年の後期に相当)の学生もここ数年は増加している。
■大学、早期にマッチング 就職活動に早期化の兆候も。
「あなたは最近、あまり顔を見せていませんね」。西ジャカルタにあるビナ・ヌサンタラ大学のキャリア・センター室。就職課の女性は、学生にしかめ面で話しかけた。「進路の相談にも乗るから、気軽に顔を出しなさい」
同校は、ITや経済のほか工学など技術系の人材育成に力を入れている。入学当初からキャリアセンターへの登録を義務付け。大学側が企業を招いて行う説明会に早期から参加させ、学生と企業のマッチングに熱心だ。
就職課によると、企業による採用活動の早期化が数年前から顕著に。インドネシアの企業ではこれまで、通例として卒業生を対象に採用活動を行うケースが多かったが、「二、三年生を対象に説明会を実施する企業も目立ってきた」。
アジア就職情報サイト大手「ジョブ・ストリート」の広報は「まだまだ主流は卒業後に仕事探しを始めるタイプ」と話すが、今後の学生のニーズに応じたサイト刷新に意欲的だ。
採用活動の早期化が進む背景の一つには、国内産業が成熟に向かい始める中、職務経験を持つ専門的な人材の賃金相場が高騰していることもある。日系リクルート大手「セルナジャヤ・プリマ」の蛇草真寛マーケティングアドバイザーは「賃金が比較的安価な新卒者に目が向き始め、優秀な学生の採用に力を入れている企業は多いようだ」と話す。