新種のメガネザル発見 スラウェシ島で2種 固有種の宝庫
米ウェスタン・ワシントン大学(WWU)人類学科の研究員で霊長類学者のマイロン・シェイケル氏ら調査チームはこのほど、スラウェシ島で新たに2種類のメガネザル(学名、タルシウスTarsius)を発見したと発表した。スラウェシ島には、多様な固有種が存在しており、これまでにも新種が発見されてきた一方で、森林破壊や密猟などでメガネザルの個体数は減少している。
2種は研究者の名前を取り、「タルシウス・スペクトルムグルスキアエ(Tarsius spectrumgurskyae)」と「タルシウス・スプリアトナイ(Tarsius supriatnai)」と名付けられた。
タルシウス・スプリアトナイはゴロンタロ州ポフワト県ブンブランとゴロンタロ県にある野生動物保護区ナントゥで、タルシウス・スペクトルムグルスキアエは北スラウェシ州にあるタンココ国立公園で発見された。マイロン氏によると2匹は非常によく似ているが、鳴き声が大きく異なる。さらに他のメガネザルのDNAと比較することで、新種であることが確認できたという。
■減少する個体数
学名に名前が使われた、メガネザル研究の専門家で、テキサスA&M大学で人類学の教授を務めるシャロン・ガースキー氏は「現在、世界には11種類以上のメガネザルが存在している」と話す。
そのほとんどがスラウェシ島で発見されているが、カリマンタン島やスマトラ島の南端、フィリピンにも生息している。スラウェシ島ではパーム農園や農地開発の影響で、森林破壊が進みメガネザルのすみかが奪われているほか、農薬の使用や密猟が、個体数を減らす原因となっている。
同島でメガネザルが多く見つかる理由は「同島は南北に分かれていた大陸がぶつかり合ってできた島で、南北で大きく土壌が異なるため、植物、鳥類、哺乳類などが影響を受け、ここにしか存在しない生態系が多様に存在している」と説明する。
同じく新種に名前が使われたインドネシア大学(UI)で生物学の教授を務めるジャトナ・スプリアトナ氏によると、スラウェシ島ではこれまでに10種類近くのメガネザルが発見された。さらにメガネザル以外にもクロザルやバビルサなど固有種が多く存在する。
ジャトナ氏は「スラウェシ島は生物地理学的に異なるアジアとオーストラリア地域の間に位置し、二つの地域に生息する種が混在しているため、多くの生物が種分化し、特徴ある動物群が多く生息している」と話した。
ジャトナ氏は環境保護活動を進める国際的な非政府組織(NGO)「コンサベーション・インターナショナル(CI)」のインドネシア支部長を15年間務めるなど、環境保全の研究や活動を進めてきた。名前については「とても光栄。私が1975年から続けてきた霊長類に関する研究や保護活動に、同じ研究者たちも感謝してくれているのだと感じた」と話した。
シャロン氏も「研究者にとって自分の名前が学名としてこの世に残ることは、本当にすばらしいこと。とっても驚きましたが、他の研究者たちが、このような形で私を認めてくれたことは光栄です」と喜びの声を語った。(毛利春香)
メガネザル 小型の霊長類であるメガネザルは約6420万〜5840万年前にヒトの祖先と共通の祖先である霊長類から分化。大人のオスは体重約120グラムで、メスはオスに比べ10%ほど軽い。自身の脳と同じ大きさほどある大きな目が特徴で、首は180度回る。夜行性で昆虫などを食べる。腕に比べて長い足を持ち、静止した状態から約3メートル飛ぶことができる。