【スラマットダタン】「ホンダってこうだよ」 ブランド強化目指す HPM 渡邉丈洋社長
本田技研工業の四輪車製造・販売の現地法人ホンダ・プロスペクト・モーター(HPM)の社長として3月に赴任した渡邉丈洋さん(51)。就任式では、内田知樹前社長からHPMのハンドルを受け取り、「ホットな国で、熱いハートでマーケットに向き合う」と語った渡邉さんにあらためて抱負を聞いた。
渡邉さんがホンダを選んだ理由は、米国で過ごした大学時代にさかのぼる。バイクに乗るのが好きだった渡邉さんは、世界を相手に展開するメーカーで働きたいと考えていた。レポート作成のためのアンケートで、ホンダを米国のメーカーと考えている米国人が多いことを知る。「米国人の好みや必要を満たした、この国に適した車を作れるのは、この国のメーカーしかいない」と彼らは考えていたという。
ユニークで、クリエーティブ、新しい発想を尊ぶ社風のホンダに入社を希望した。「人々に価値のあるものを提供する。それをできるだけ多くの人々に使ってもらいたい」と考えたという。
■メキシコのスタイル
初めて赴任したのは、人懐っこくて情熱的なラテンの国・メキシコ。販売店の経営者たちは若くエネルギッシュで、ホンダ・ブランドの未来について情熱を持って語り合っていた。会議では、厳しい意見を戦わせるが、それが終わると一転、テキーラを飲み食事をとって、楽しむことに全力を尽くす。オンとオフ、ビジネスと楽しむ時との切り替えは、印象深く参考になったと語る。
■米国の懐の広さ
米国赴任中に、東日本大震災を経験する。日本のサプライヤーが被害に遭い生産に大きな影響が出た。供給は半分となりホンダの車が店頭から消えた。死活問題の状況の中で、ホンダが築いてきた信頼関係と米国人の懐の深さを実感する。販売店のオーナーから責められることはなかった。「ビジネスには波がある。天災だから仕方ない」と言葉をかけられた。言い訳のようなことはせず、回復の見通しが立ってないことも含め正直に話した。
コミュニケーションを心がけ、販売店と一緒に顧客引き止め策を必死に考えた。厳しい状況だったが、販売店とメーカー、経営と労働者、日本人と米国人、社内の他の部署同士の信頼関係が問われ、あらためて構築された。「社内の絆が強まった時」と、渡邉さんは当時を振り返り、「あらためてコミュニケーションとは何かを学んだ」と語る。
■ブランドを強くする
2011年以降、インドネシア全体の販売が伸び悩む中、HPMは、マーケットシェアを5%から19%まで延ばした。「早足で通り過ぎて見過ごしたものもあるはずで、改めて足腰を強くする必要がある」と渡邉さんは語る。「競合各社は失ったシェアを取り戻すため、いろいろな戦略を仕掛けてくる。そのような中、我々はさらに成長を目指す」。この国で、ホンダ・ブランドを強くするのが最大の目的といい、「ホンダってこうだよ」と共感や好感をもって受け入れられるように高めていきたいと締めくくった。(太田勉、写真も)