西陣織にバティック柄 再活性化へ海外に活路 イナクラフトに出展
京都の伝統工芸、西陣織が、26日に始まった国内最大級の手工芸品展「イナクラフト」に出展している。インドネシア伝統のバティック(ろうけつ染め)柄を取り入れるなど趣向を凝らし、インドネシアでの販路開拓に乗り出す。
出展しているのは、西陣の織元7社からなる「西陣織アンソロジー」。和装や伝統工芸をもっと市場に広め、次世代に残していこうと4年前に結成されたグループだ。
きっかけは「着物のファンを育てたい」と、大阪の百貨店に依頼されたこと。これまで問屋を通じて販売されることが多かった西陣織を新たな形で発信しようと、結成以来、日本国内で百貨店催事や展示会を行ってきた。
日本で着物産業が衰退傾向にある中、さらに海外でも市場開拓しようと、アンソロジーのメンバーは昨年4月、イナクラフトを視察。今回が初の海外出展となった。アンソロジー代表で西陣・田中伝の田中慎一店主(61)は「生地を見ていただき、買っていただきたい」と意気込む。
日本での着物再活性化につなげたい狙いもある。今河織物の今河宗一郎社長(43)は「海外で盛況になり、着物の情報が日本に逆輸入されれば面白いのでは」と話す。
インドネシアと深いつながりを持つ織元もある。西陣織の原料である生糸はそのほとんどが中国からの輸入だが、とみや織物では、10年ほど前からジョクジャカルタ特別州産の「野蚕の繭」を手で紡いだ糸を使い、帯を制作している。冨家靖久社長(50)は「これまで材料を仕入れるという概念しかなかったが、インドネシアの成長は著しく、市場として魅力的。親日的で、受け入れてもらいやすいのでは」と期待を寄せる。
各社はまた、インドネシアのバティックとのコラボレーションも進めている。ブースには伝統的な和柄に混ざり、ジョクジャカルタ王宮の伝統的なバティック柄やワヤン(影絵芝居の人形)模様を取り入れた西陣織の生地が並び、訪れる人たちの目を引いた。
26日にはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領や石井正文駐インドネシア大使もブースを訪れて見学。大統領は、自身の肖像画の西陣織をプレゼントされ、「絵かと思った」とその緻密さに驚いていた。
イナクラフトは中央ジャカルタのジャカルタ・コンベンションセンター(JCC)で30日まで開催。JCCのほぼ全館を使った会場で、伝統工芸品や食器、家具、衣類など計1400社が展示・販売している。
開場は午前10時〜午後10時。主催は手工芸品輸出・生産者協会(ASEPHI)とメディアタマ・ビナクレアシ。(木村綾、2面に関連)