二輪2社に制裁金 KPPU 価格つり上げで 企業側 不服申し立てへ
公正取引委員会に当たる事業競争監視委員会(KPPU)は20日、二輪販売のカルテルを結んで不当に販売価格をつり上げたとして、ホンダとヤマハ発動機の現地法人に制裁金納付を命じると発表した。企業側はこの審査結果を不服として、申し立てをする方針を示している。
KPPUによると、人気車「ミオ」(ヤマハ)や「ビート」(ホンダ)など排気量110〜125ccのスクータータイプの価格を意図的に操作し、つり上げていた。これが独占禁止法(1999年第5号)違反に当たるという。
現在、二輪市場はホンダとヤマハの2社でシェアの95%以上を握る寡占状態。
KPPUが公表した調査内容で、ゴルフでの会合や2015年1月10日のヤマハ社内のメールでのやり取りの中に競争を妨げるカルテルを裏付ける証拠があったとしている。
制裁金の額は、ヤマハが250億ルピア(約2億1200万円)、ホンダが225億ルピア(約1億9100万円)。制裁金は国庫に納付される。
企業側はこの判断に不服がある場合、14日以内に地方裁判所に提訴できる。裁判所は受理後30日以内に判断を下す。それでも不服な場合、最高裁判所に上訴できる流れになっており、日本と比べると審理期間が短い。
ヤマハ発動機本社広報によると、15年年初からKPPUの審査が入っていた。制裁金納付を命じる審査結果について、ヤマハの広報担当者は「弊社の主張と異なっている」と指摘。ホンダの広報担当者も「価格つり上げの事実は一切ない」としており、両社は今後、地方裁判所に不服申し立てをする考えだ。
インドネシア事情に詳しく、国際協力機構(JICA)専門家としてKPPUに派遣されている中里和平氏は「カルテルで、国内の食品企業などに制裁金を科してきた事例はあるが、グローバル企業に対しては比較的少ない」という。
KPPUには、立ち入り検査して情報収集する権限が付与されておらず、自己申告した場合の課徴金減免制度も設けられていないため、他国当局と比べて権限が弱く、情報収集能力に限りがあるとされる。
インドネシア二輪車製造業者協会(AISI)のグナディ・シンドゥウィナタ会長は地元メディアに対し「今回の審査結果の証拠自体が弱いとみられる。このような証拠で制裁金を命じられるようでは、投資家心理に影響してしまうのでは」と話している。(佐藤拓也)