アートと娯楽の融合を 西ヶ谷プロデューサーに聞く JFFで上映中の「ふきげんな過去」

 国際交流基金がインドネシアで初めて独自に主催した日本映画祭(24〜27日、JFF)の上映作品の一つ「ふきげんな過去」。映画祭開幕に合わせ来イした同作品のプロデューサー、西ヶ谷寿一さん(46)に日本映画産業の現状とJFFに期待することを聞いた。
 西ヶ谷さんの来イは2度目。バリの映画祭で同作品上映が決まり、9月に初来イした。10月の東京国際映画祭(TIFF)ではインドネシア映画特集で4作品を鑑賞、イ映画を「アート作品の水準は日本の自主制作映画と比べても高い。エンターテインメント作品は予算を含め韓国が上だが、インドネシアもそうなる傾向がある」と評価する。
 西ヶ谷さんは過去10年にわたり新人監督の発掘・育成する仕組みを作ろうと尽力。「面白い映画は面白い監督に撮ってもらいたい」との思いもあり、勤務する東京テアトル主催の「水戸短編映像祭」で新人発掘を始めた。賞を取るような才能ある監督がいても、支援が少ないために、消えていく人も多かったという。
 「いかに商業映画としての入り口と接点を作れるか、という目的で10年やってきた。今後10年は、もう少し予算を掛けたエンターテインメントでより深いもの、映画ファンと一般の人が見られて芸術度も高い、アートと娯楽をバランス良くミックスさせた着地点のような映画を作ろうとしている」と話す西ヶ谷さん。
 「大きな商業記録を残しながらも、面白いし後に残る。チャレンジしている」実例には、黒澤明や宮崎駿、スティーブン・スピルバーグら大監督を挙げた。
 今、日本では作り手の世代交代が起き、制作体制にも変化が生じているという。「シンゴジラ」(庵野秀明監督)はその一例で、「制作委員会がなく、東宝1社で作ったことで、監督、プロデューサーの意思がはっきり反映されている」と西ヶ谷さんは話す。
 日本映画の現状については「人気のある原作の映画化に寄り、再現度がどうかだけで終わってしまう。観客は原作のファンが多く、映画ファンが縮小している」と警鐘を鳴らす。さらに「日本の漫画が韓国で映画化され、カンヌで賞を取ったときも、なぜ日本で映画化しなかったのかと思うことがあった。出版社などに原作権を取りに行くと、ほとんどの作品に韓国がタッチしてきている」とも指摘する。
 一方、JFFができたことで「人口が多い国に向けて作ってみよう、売れてやろうという意識や視点が日本の監督の間で生まれる」と期待し、「韓国は自国人口に限りがあり、産業も限られているのでアジアに出るぞ、というまとまった意思があった。日本でもそういう状況にあるのではないか」と付け加えた。(中島昭浩、写真も)

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