「一帯一路」に注目せよ 中国のインドネシア政策 森川・駐メダン総領事に聞く
インドネシアで存在感を増している中国。中国の対インドネシア政策や対イ関係について、中国語の専門家として中国、シンガポール、マレーシアなどの在外公館に勤務経験の長い森川博文駐メダン総領事に聞いた。
――中国の方針は。
森川総領事 中国という国は必ず大きな政策がある国で、共産党が党大会でその政策の大方針を出し、その後、行政機関で具体的政策を作り上げていく。現在の中国の外交政策の中で一番重要、かつ注目する必要があるのは「一帯一路」政策である。この政策は2013年の共産党大会で決められ、14年11月に中国・北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、習近平国家主席が提唱した経済圏構想。
――「一帯一路」とは。
「一帯」とは大陸で中国から中央アジアを経てヨーロッパに行くルート、いわゆる陸のシルクロードで、「一路」というのは海のシルクロード。これは東南アジアを経てアフリカまで海の線上にある国との経済文化交流を活発にして行くという構想だ。具体的な政策として、中国政府が重視しているのはインフラ整備協力で、港湾、高速道路、空港、鉄道などを建設する政策の下、15年末にアジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立した。
――どんな企業が進出。
北スマトラ州の中国企業はインフラ関連が中心で、日用品や家電などの製造業は進出していない。インフラ関連の中国企業は国営企業が中心になっている。対中輸出入品目を見ると、北スマトラ州の対中国の輸入は世界第1位で、他国を圧倒しており、鉄鋼機材、電気機械製品、化学肥料が中心。対中輸出品目は、パーム、ゴム中心で米国に続いて第2位だ。対中貿易は非常に活発で、その理由は中国銀行、中国工商銀行があり、信用状取引や融資が簡単であることが挙げられる。
――華人が多い。
メダンに最初に渡来した華僑は広東の客家人で、経済活動を活発に行って銀行を設立、その後、福建省から多くの華僑が訪れ、この二大華僑勢力が一番大きい。メダン華僑は客家語、福建語(閩南=びんなん=語)を話す。駐メダン中国総領事の説明では、メダンの華人数は60万人(人口250万人の24%)おり、大半は貿易関係、簡単な製造業、流通業に従事している。メダンにはおいしい中華料理レストランが多く、香港の高級店に匹敵する店もある。
――電力事情は。
北スマトラ州での発電能力はかなり達成されたが、実際問題停電が頻発している。理由は送電線網、配電設備に問題があり、古い施設を修理せず使っているので、夕方以降に電力使用量が増大すると停電する。いくら発電しても送電設備が古ければ送れない。メダンの電力問題が解決すれば、工業団地も増えて日本の企業も進出しやすくなるだろう。
森川 博文氏(もりかわ・ひろふみ)旧大阪外大卒。外務省では中国課、経済協力局、領事局に勤務。在外公館は中国国内、香港、台北、米国ヒューストン総領事館、コタキナバル駐在官などを歴任、15年4月から駐メダン総領事。在メダン日本総領事館の管轄はスマトラ北部6州。管内邦人数は15年10月1日付で323人、日系企業数は36社。63歳。大阪市出身。(濱田雄二、写真も)