自然災害に強い道路 JICA 円借款事業 アチェ山岳地に完成
アチェ州中部アチェ県タケゴン市〜同州ガヨ・ルエス県ブランクジュルン市(約137キロ)をつなぐ道路の完成式が8日、タケゴン市で開かれた。国際協力機構(JICA)の円借款事業で、山岳地帯にあった既存の道路を、地元住民の生活基盤を支えられるよう、地震や大雨による土砂崩れなどの災害に強く、安全に通行できる道路に整備した。地震や津波などで沿岸部の道路が通行できなくなった緊急時には、代替道路としても活用できる。
山岳地帯にあるタケゴン市〜ブランクジュルン市間は、オートバイで通るのが困難なほど荒れた山道や、砂利道、簡易アスファルトで作られた道路が多く、大雨のたびに土砂崩れやがけ崩れが発生。地元の住民らも、雨期や夜間は安全に通行できず、利用していなかったという。また、アチェで約30年続いた分離独立派と政府の紛争や、2004年のスマトラ沖地震・津波、13年に発生した中部アチェ地震などの被害も受けてきた。
当初は同州ピディ県グンパン〜中部アチェ県パメウ間(約64・8キロ)の山岳地帯に道路を新設する計画だったが、森林保護区などがあり環境アセスメントの取得に時間がかかるため、インドネシア政府からの申し出で計画が変更となった。
事業費は約6530億ルピア。09年10月から事業を開始し設計などの段階を経て、13年5月に着工した。のり面では岩盤の崩壊や表層からの落石などを防ぐため、岩盤に棒アンカーを挿し表面に金網を張り、その上にコンクリートを厚さ12センチ吹き付ける「吹付コンクリートのり面保護工法」などの技術を用いて進められた。
整備前、タケゴン市〜ブランクジュルン市間の所要時間は車で約6時間だったが、工事後は3時間に短縮された。重機なども安全に通行できるようになり、資材の運搬なども増えているという。また、スマトラ沖地震・津波で壊滅的被害を受けた際、インド洋の震源に面する沿岸部が隔離されたが、災害時の代替道路としても活用できる。
さらにタケゴン市では、ガヨ・マウンテンコーヒーやタワル湖などが有名で観光地として注目されており、観光客が訪れる際に使用できる主要道路となる見込み。ことし8月にはタケゴン市近郊にあるルンブル空港の改修が終わり、ライオンエア傘下のウィングエアも8月から、北スマトラ州メダン〜タケゴン間を毎日運航している。
完成式には、在インドネシア日本大使館の本清耕造公使やJICAインドネシア事務所の安藤直樹所長、公共事業・国民住宅省のアリ・スティアディ・モエルワント道路総局長、同省のファトゥルラフマン・アチェ国道建設局長らが出席した。
ファトゥルラフマン局長によると、アチェ州内にある道路の舗装率は94%で、バンダアチェ市の環状道路や同州山岳地での道路建設も予定されているが、1980〜90年代前半に建設されたランサ県周辺の東海岸の道路や西海岸側の道路などが建設から30年が経過し、修繕の時期を迎えているという。
同局長は「バンダアチェ市と中部アチェ県を結ぶ道路はまだ無い。この状況は今後、改善する必要がある。また、修繕が必要なアチェ州の東海岸と西海岸の道路事情も改善したい」と話した。
本清公使は「完成した道路を通じて、地元の方の日常生活の利便性と、物流効率の向上による地域経済発展でアチェ州の復興・発展の一助となるとともに、災害に強いインフラとして、今後の災害時の被害軽減に寄与していくと確信している」と語った。(毛利春香)