監視映像を改ざん? コーヒー毒殺事件 弁護側証人が指摘
毒入りコーヒー事件の第21回公判が15日、中央ジャカルタ地裁であり、弁護側証人の専門家が事件現場に設置された監視カメラの録画映像について、「改ざんされた可能性がある」と証言した。同映像は検察側が先に提出した重要証拠の一つ。改ざんの可能性を指摘した弁護側の作戦には、証拠の信頼性を低下させる狙いがある。
問題の録画映像は8月10日の第10回公判で、検察側証人の国家警察本部法医学研究所デジタル科学捜査チームの幹部が公開した。事件現場となったカフェ内の映像で、殺人罪に問われているジェシカ・クマラ・ウォンソ被告(27)の「不審な挙動」が記録されていた。
同幹部の指摘した「不審な挙動」は主に▽被害者ワヤン・ミルナ・サリヒンさん(当時27)の飲んだアイス・ベトナムコーヒーがテーブルに運ばれた後、同被告がかばんから何かを取り出す動き▽ミルナさんが気を失い、カフェから運び出されるまでの間、同被告がしきりに太ももをひっかいたり、手を触ったりしている様子――の2点。コーヒーに混入したとされる毒物のシアン化ナトリウムは、肌に触れるとかゆみを感じるため、同幹部は「被告はシアン化ナトリウムに触れた可能性が高い」と証言した。
これに対し、15日に召喚された弁護側証人の映像解析専門家、リスモン・ハシホラン・シアンパルさんは、地元テレビのコンパスTVとTVワン、ブリタサトゥが公判を中継した際に映っていた監視カメラの映像などを分析。
監視カメラの映像について、「一部を拡大し、画素数を変化させることで光の加減を変えるなどし、動きが違って見えるように編集したのではないか」と証言、改ざんの可能性を指摘した。
具体的には、シアン化ナトリウムを取り出したとされる映像について、「光の加減などを調整したことで被告の手の部分が白くなり、何かを取り出しているように見えているだけだ」と証言。被告が太ももをかいたとされる映像についても、白い光により被告の指の長さが変化したように見える点を指摘した。
他にもコマ数が抜けている部分があるなど改ざんした形跡があると証言。「原始的な手法。映像改ざんは違法であり、証拠にはならない」と付け加えた。
午後5時すぎからは検察側証人のデジタル科学捜査チーム幹部も召喚された。同幹部は怒りをあらわにしながら、リスモンさんの証言を真っ向から否定。裁判官に対し「リスマンさんが分析した映像をもう一度、分析させてほしい」と申し出た。
証拠映像をめぐる証人喚問では公判の冒頭、ハリ・ウィボウォ検察官が裁判官と弁護団に対し、「今回の証人はどういった機器を使い、どのような方法で監視カメラの映像を分析したのか。分析するに当たっての基準は満たしているのか」などと発言、公判そのものを続けるべきかを尋ねたため、弁護団が猛反発し激しい言い合いに発展した。リスモンさんの経歴などを聞いた上で、最終的に裁判長が証言を聞く必要があるとして続行を決めた。
次回公判は19日の予定。(毛利春香、写真も)