用地収用、融資契約道半ば 高速鉄道 中国案採用から1年 出資企業頼みの現状
ジャカルタ〜バンドン間の高速鉄道計画で、インドネシア政府が中国案に正式採用を決めてから、間もなく1年がたつ。7月中旬にようやく運輸省から建設許可が発行されたが、工事は進んでいない。用地の収用は6割にとどまり、事業資金の75%を融資する中国の国家開発銀行との融資契約は締結できておらず、2019年5月末の開業を危ぶむ声が広がる。
8日、中央ジャカルタのジャカルタ・コンベンションセンター(JCC)で国営企業が参加する「インドネシア・ビジネス&デベロップメント(IBD)エキスポ2016」に、中国とインドネシアの企業連合による合弁会社、高速鉄道インドネシア・中国(KCIC)が参加した。
KCICには、建設会社のウィジャヤ・カルヤ(通称ウィカ)や高速道路管理・運営会社のジャサ・マルガなどの国営企業が出資する。大手の国営企業がブースを並べる会場の中で、KCICは中央に最大規模のブースを陣取り、注目を集めた。
ブースの大きさとは裏腹に事業の進ちょくは順調とはいえない。
KCICは8月末、事業総額51億ドルの75%を融資予定の国家開発銀行との契約を結ぶために中国・北京を訪れたが、締結できなかった。KCICのハンゴロ・ブディ・ウィラヤワン社長は締結できなかった理由について、記者団に「いまは話すことはできない」と説明を拒んだ。
融資契約がまとまらないため、KCICは出資企業のウィジャヤ・カルヤなどの資本に頼っている。KCICのフェブリアント・アリフ・ウィボウォ広報担当は今月以内に融資契約を締結できるとしている。
発行がずれ込んでいた運輸省からの建設許可をめぐっては、7月中旬にようやく取得したが、着工区域は国営農園第8プルクブナン・ヌサンタラ(PTPN)の土地であるワリニ駅周辺や、ジャサ・マルガの運営する高速道路周辺の一部にとどまり、出資企業の地盤の域を超えていない。
フェブリアント広報担当によると、用地の収用を終えたとされる6割の内訳は、西ジャワ州ブカシ市ジャティブニン〜チクニルと、駅が建設されるワリニ(西バンドン)、トゥガル・ルアル(バンドン)の一部。年内に用地収用を完了するというが、KCICの公表する計画はたびたび延期されている。
昨年9月、ソフヤン・ジャリル前国家開発計画相が首相官邸で菅義偉官房長官に中国の事業案を採用する方針を伝え、本格的に中国案で動き始めた。
当初インドネシア政府は資金面の負担を軽減するため時速200〜250キロの中速鉄道を予定していたが、ことしに入り350キロ規模の高速鉄道に変更。鉄道区間の総距離は150キロから142.3キロに、事業総額は55億ドルから51億ドルに縮小している。(佐藤拓也)