1箱5万ルピア案で議論沸騰 たばこ値上げUI調査結果 喫煙者は3人に1人
たばこ1箱2万ルピアから5万ルピアへ値上げする――。調査結果を基にした大学調査機関による提案がネットで広がり、賛否両論が噴出している。人口の3分の1が喫煙者というたばこ大国のインドネシアで、たばこ業界もたばこ税引き上げによる大幅値上げの打撃を懸念。一方、国民の健康意識向上を高める機会にしようとの声も上がっている。
たばこ値上げ案の発端は、インドネシア大学(UI)公衆衛生学部の経済研究・保健政策センターが7月に発表した世論調査の結果。
調査は昨年12月〜ことし1月、全国各地の千人を対象に面接形式で実施した。この結果、82%がたばこの値上げに賛成し、5万ルピアへの大幅値上げにも72%が賛同したという。
同センターのハスブラ・タブラニ教授は、喫煙者数は人口2億5千万人の34〜35%に上ると推計。男性の67%、女性も4%が喫煙しているとの見方を示した。
また「大幅な値上げは喫煙の抑制方法の一つになる」と指摘。しかし一方で、さまざまな媒体を通じ、たばこの広告が大量にあり、小学生など年少者の喫煙者を生むなど悪影響をもたらしているとして規制強化を訴えた。
■タバコ農家ら反発
この値上げ案がメディアやソーシャルメディアで拡散され、値上げ実施をめぐる憶測を呼んだ。
たばこ産業に従事する労働者らは猛反発。タバコ農家協会(APTI)のスセノ・リバン会長は、値上げでたばこの消費量が減ることで、特に小規模な工場などを営む零細企業に打撃を与えると懸念を表明。過去5年間で物価上昇やたばこ税の増税により、1200のたばこ工場が閉鎖され、10万2500人が職を失ったという。
現在、タバコの葉や丁子を生産する農家や工場勤務の労働者、自転車で回るコーヒーの行商人や露店でのばら売り業者など、少なくとも610万人がたばこ産業に従事しており、その多くが失業する可能性があると指摘する。
また、インドネシアたばこ産業協会(GAPPRI)のハサン・アオニ・アジズ事務局長は「大幅に値上げされれば、価格の安い違法たばこが出回るだけだ」と警告。特に収入の低い喫煙者の禁煙にはつながらないとしている。
また丁子農家協会(APCI)は、UIの研究は海外から助成を受けて実施された可能性があると指摘。米国の前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が支援する禁煙推進運動「ブルームバーグ・イニシアティブ(BI)」が、インドネシアの非政府組織(NGO)や政府機関に資金を提供している疑いがあると話した。
値上げの議論が過熱し、説明を求められたスリ・ムルヤニ財務相は、たばこ税の税収目標は2017年国家予算案の審議に合わせて調整していくと述べ、十分に議論して税率を決める考えを示している。
ニラ・ムルック保健相はこれまでに15歳以下の年少者や女性の喫煙者が増加傾向にあると指摘。喫煙による健康被害について理解を広める機会を教育機関で設けるほか、児童の前で教員が喫煙しないようにするなど、政府と市民が協力して意識を高めていく必要があると呼びかけた。たばこかプルサか それでも吸い続ける?