首都で1万人に周知 財務省とアピンド 「租税特赦の利用を」 「自身の利益、自国の発展」

 財務省とアピンド(経営者協会)は21日、中央ジャカルタの財務省ダナパラビルで午前と午後に分け、投資家が海外へ税金逃れのために移した資産を国内に還流を促す法律、タックス・アムネスティ(租税特赦)法の説明会を開いた。8月1日まで続け、首都で計1万人に利用を呼びかける。ユスフ・カラ副大統領は財務省に足を運び講演し、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領も同日、自ら地方都市メダンへ向かい、周知活動に時間を割き、「自国の発展につながる」租税特赦法の活用を訴えた。
 21日、財務省の駐車場に高級車が並んだ。1千人を収容できるホールは、租税特赦に関心のある投資家でほぼ埋めつくされた。
 説明会の冒頭、政府首脳と海外に資産を保有しているとされる投資家は起立し、「アムネスティ・パジャック(租税特赦)」の旗を前に国家「インドネシア・ラヤ」を合唱した。経営者の集う会合では異例の光景だ。
 租税特赦の運用をめぐっては、シンガポールのプライベート銀行が、インドネシア人の保有する資産を移されないよう、税金の引き下げなどの便宜を図っていることがメディアで取り沙汰されている。
 説明会の質疑応答で「海外で働き、一定期間経過後に不動産などを購入した場合は租税特赦の対象になるのか」、「申告分と申告しない分の資産を、税務署はどうやって見分けるのか」など、特赦の対象となる資産の範囲や個人情報の扱い方を見定める質問が相次いだ。
 投資家は自身の利益や自国の発展に期待する「愛国心」などを判断材料に、資産を「預ける国」を慎重に選定する構えだ。
 海外を事業対象とする印刷業経営者は「対象となるすべての人に租税特赦を活用してほしい。インドネシア経済が良くなるきっかけになる」と声を強める。
 国内で小売業を経営する男性は「これまで納税していなかった資産がある。所得税の税率が25%から2%になり、この機会を逃す手はない」と関心を示す。また「この期間に申告漏れした場合、税金に200%課せられる。それは避けたい」とも話す。
 出席者の中には、「納税は済んでいるので(租税特赦を)活用する必要はない。きょうは探りに来ただけ」と2千億ドルを超えるとされる多額の資産の動向を気にかける人もみられた。メディアの取材を断り、足早に帰る姿もあった。
 租税特赦の「受け入れ先」に認定されている大手アセット・マネジメント会社の社長は「まだ実利面で影響はない」とするが、1日10件以上の問い合わせを受け、期待値は高いと話す。「ファンドの解約料を無料にして乗り換えを自由にする」ことで資産運用を促すなど、始まったばかりの租税特赦の準備を進める。(佐藤拓也、写真も)

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