シーラカンスの新種 2億3000万年前 西ティモールの化石から 北九州の博物館が発表

 東ヌサトゥンガラ州西ティモールで約2億3千万年前(三畳紀後期)の地層から見つかったシーラカンスの化石が、新種であることがわかった。共同研究を進めていた北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)の籔本(やぶもと)美孝学芸員とリオデジャネイロ州立大学のパウロ・ブリトー准教授が1日、明らかにした。この発見で、シーラカンスが2億年以上前、広く世界中に生息していたことも示された。

 新種の化石は推定全長23.4センチ。背びれにある9本のひれすじやそこに小さなとげが並ぶこと、うろこの表面にある5〜10本の細長い隆起物(リッジ)がそれぞれ離れていること、頭部骨格の表面のほとんどが滑らかであったことから、新種と判断された。新種のシーラカンスの化石はワイテイア属に分類され、同属は6種となった。
 これまでワイテイア属のシーラカンスの化石は、古生代に存在した二つの巨大な大陸に挟まれたテチス海の西側に位置する、マダガスカルと東グリーンランド、南アフリカ、カナダの約2億5千年前(三畳紀前期)の地層から発見されていた。
 今回の新種の化石がテチス海の東端にある西ティモールで見つかったことから、三畳紀にはワイテイア属のシーラカンスが広く世界に分布していたことも示している。
 シーラカンスはこれまでに約130種が知られている。うち南アフリカの「ラティメリア・カルムナエ」と、インドネシアの「ラティメリア・メナドエンシス」が現存する2種で、深海で生き延びたシーラカンスが祖先と考えられている。
 籔本さんは「シーラカンスが見つかること自体が大変まれ。インドネシアでの分布や生息数などはまだわかっていない」と話す。インドネシアのシーラカンスは頬が金色がかっている特徴があるが、外見はほぼ南アフリカのものと変わらない。一方で、遺伝子は異なるという。

■博物館で出会う
 東京大学名誉教授(分子生物学者)の大石道夫さんが所持していたことから学名を「ワイテイア・オオイシイ」と命名。籔本さんは2014年に城西大(埼玉県坂戸市)の水田記念博物館大石化石ギャラリーで標本を観察していた際、インドネシア産シーラカンスの化石と出会う。
 「目の下を縁取る骨の形態からワイテイア属だということはすぐにわかった。骨の先端が水平に前方に伸びることが特徴」と籔本さん。ワイテイア属に分類される新種のシーラカンスである可能性が高いとして研究を続けてきた。
 一方、大石さんは古生物学者の父の影響もあり魚の化石を長い間、収集してきた。中でもシーラカンスは、太いひれが四足動物の原型ではないかといわれているなど生物進化の観点から興味があり、これまでに十数種ほど化石を集めてきたという。
 「スラウェシ島沖で生存しているシーラカンスが発見されたこともあり、発掘地がティモール島であるこの化石に興味を持った。スラウェシ島沖に生存しているシーラカンスとどのような関係があるのか、今後の研究を待ちたい」と話した。
 いのちのたび博物館では7日まで、1階のエントランスで同シーラカンスの化石を無料で公開する。(毛利春香)

◇シーラカンス 絶滅したと長年考えられていた深海魚だったが、1938年に南アフリカで生きた状態で発見された。成長すると体長約2メートル、体重約91キロになり、60年以上を生きると考えられている。4億年ほど前から生息し、約6600年前(白亜紀)には地球に衝突した隕石(いんせき)の影響でほとんどの種が絶滅。白亜紀以降の化石は見つかっていない。その姿を太古からほとんど変えていないことから「生きた化石」と呼ばれる。インドネシアでは「ラジャ・ラウット(海の王様)」と呼ばれ、97年に北スラウェシ州マナドの魚市場で売られているシーラカンスが見つかった。以降、同州ブナケン国立公園海域付近で漁民が捕獲し、福島県いわき市の水族館「アクアマリンふくしま」などの日イ調査チームが調査を実施。2006年に中部スラウェシ州ブオール沖で、10年にパプアのビアク島海域でシーラカンスの撮影に成功した。

社会 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

クナパくんとブギニ先生NEW

私のじゃかるた時代NEW

編集長の1枚NEW

キャッチアイ おすすめニュースNEW

インドネシア企業名鑑NEW

事例で学ぶ 経営の危機管理

注目ニュース

マサシッ⁉

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

有料版PDF

修郎先生の事件簿

メラプティ

子育て相談

これで納得税務相談

おすすめ観光情報

為替経済Weekly