バティック柄を発信 ユニクロ 日本など12カ国・地域で発売 伝統を融合、若い世代に
ファッションブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング・インドネシアは3日、「バティック・モチーフ・コレクション」を発表した。国内のほか日本など世界11カ国・地域でも販売する。日常生活に密接に結びついた伝統文化であるバティック柄を世界に発信し、認知度の向上を図る。売り上げの一部は取引先工場従業員の教育支援活動に充てる。
コレクションはウィメンズとメンズの2種類。ウィメンズは軽くて清涼感のある100%レーヨンやコットン素材で「風通しのよい」などの意味がある「エアリー」をテーマに商品化した。胸部は絞ってスリムにし、腹部付近にタックを付け、風が通るようなドレープなシルエット。ブラウスとチュニック、ドレスの3カテゴリーがあり、着丈などが異なる全7タイプ。
メンズは、販売が好調なえりなしのスタンドシャツやシャツ、半袖シャツの3タイプ。半袖シャツは、シャツの裾を直線に裁断し、脇にスリットを入れ、ボタンが隠れる比翼(ひよく)仕立てを採用し、伝統のバティックに近づけた。
バティックは2009年、ユネスコに無形文化遺産に認定された。ASEAN(東南アジア諸国連合)地域向けの衣料デザインを担当する矢原爾(ちかし)さんは「ルーツなどを一から勉強し、バティックの奥行きの深さを感じた。考えた以上に高貴で貴重で残さなければいけないもの。インドネシアの財産ですね」と話した。
インドネシア・バティック財団のコマルディン・クディヤさんが、バティック柄のデザインを担当。「世界にバティックを広めるための一助になる。結婚式はもちろん、あらゆるセレモニーで着用できます」と強調した。
柄は中部ジャワ州や東ジャワ州などの10種類。力強さや希望、ダイナミズムなどを表したり、人生を守ってくれる羽のモチーフなど、いろいろな意味や哲学が込められている。
ファーストリテイリング・インドネシアの田中倫昭COO(最高執行責任者)は「インドネシアで店舗をオープンして3年目。地域に根ざしたブランドになっていきたいという思いがある」と話す。「服を売るものとして伝統に敬意を払い、理解しながら良いところを融合させ、ユニクロを通して若い世代にも広めていきたい」と意気込みを語った。
価格は29万9千〜49万9千ルピア。国内全9店舗で販売を開始した。10日以降に世界11カ国・地域でも順次発売する。日本のほか、米国、英国、中国、韓国、台湾、香港、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシアの旗艦店を中心に展開。オンラインストアでも販売される。
同社はことし、国内10店舗目をオープンする予定。
■従業員の教育支援
ファーストリテイリングは、売り上げの一部を教育支援活動「ファクトリー・ワーカー・エンパワーメント・プロジェクト」に充てる。途上国での教育支援に実績ある国際的な非政府組織(NGO)「BSR」を通じて実施。衛生環境・健康管理や家計管理などのライフスキル習得を促進する。
教育支援活動は昨年4月にバングラデシュで始まった。これまでに1万2158人の女性従業員が教育を受けた。感染症予防のため煮沸してから水を飲む、生理用ナプキンを使用するといったことの重要さを知った結果、体長不良で早退する数は減り、欠勤率は36%低下。活動が従業員と雇用者の双方に良い効果を生み出しているという。
教育支援活動はインドネシアの取引先工場の従業員約1万2千人を対象に3年間実施する。プロジェクトを統括するCSR部のマギー・ジェイさんは「インドネシアの教育水準はバングラデシュよりも高く、家計管理に充てる時間は少なくなるだろう」と語った。(中島昭浩、写真も)