バジャイの規制強化 石油からCNG燃料へ ジャカルタ州政府 経営者「新車購入の余裕ない」

 真っ黒な排気ガスを吹き上げ、老朽化した車体を引きずって走る庶民の足「バジャイ(三輪タクシー)」をめぐり、ジャカルタ州政府が規制強化に乗り出した。石油燃料のオレンジ色のバジャイから、石油に代わるクリーン燃料として圧縮天然ガス(CNG)を使用する青いバジャイへ移行を推進。また、公共交通機関での犯罪増加に伴う運営体制改善や未許可車両の摘発を行う方針も打ち出した。しかし、安価な運賃で細々と運行する経営者に従来価格の二倍の新車を購入する余裕はなく、運営見直しに難色を示している。

 ジャカルタ特別州は二〇〇六年、大気汚染改善のためCNGの新車両導入を開始し、老朽化したバジャイを解体するなどして移行をアピールしてきた。しかし、新車購入の負担を課された経営者や高額の運賃設定を強いられた運転手からは不満も多く、移行は遅々として進まない。
 現在、登録されているバジャイはオレンジと青を合わせて計一万四千四百二十四台だが、実際は約二倍にあたる約二万八千台が州内で運行されているとみられる。
 このため、州政府はまず老朽化したオレンジバジャイの運行許可証の延長を認めず、新しい青バジャイのみ許可を出す方針を発表。交通局は無許可運転や偽造許可証を所持していたオレンジバジャイ四十台を摘発するなど強硬策を講じている。
 また最近、乗り合いバス(アンコット)内で女性の乗客が暴行を受ける犯罪が続発していることから、車内が見えないほど暗い窓ガラスの防犯フィルムの撤去、運転手と犯罪集団との共謀を阻止するために、運転手の制服着用を義務化する方策も打ち出した。

■ローン組んでも高すぎ
 州政府の取り組みに対し、経営者や運転手は難色を示している。南ジャカルタ・クバヨラン・ラマでオレンジのバジャイ二十台を所有し、運転手に貸出している元締めのアフンさん(五〇)は「青バジャイは高すぎる。ローンを組んでも、全車両を買い換えることなど不可能だ」と語る。
 オレンジバジャイの値段は一台約二千万ルピア。青バジャイは二倍以上の約五千五百万ルピア。三台なら買い換えられるが、販売業者側に新車のストックはなく、入手困難な状況が続いているという。
 オートバイ利用者も急増し、交通手段が多様化する中、バジャイ運行も苦戦を強いられている。乗り心地が良い青バジャイはオレンジバジャイより運賃を高く設定する傾向もあるが、必ずしも収入増に結び付くとは限らないという。
 運転手への貸出料金はオレンジが一日約四万ルピア、青が同十万ルピア。一日の稼ぎから差し引いた手取りは三万ルピアほどという。バジャイ運転手のワスキンさん(三二)は「朝から晩まで働いて、月収は八十万―百五十万ルピアがやっと。妻と子ども二人を養っていくので精一杯だよ」とこぼした。
 中央ジャカルタ・タムリン通りからバジャイに乗って帰宅するという会社員トゥルーリーさん(三九)は「青バジャイは清潔で静か。値段も新旧で大差ない」と指摘する。バジャイを愛用する理由として「値段交渉もできるし、タクシーよりも安くて便利」と話した。

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