投資適格に引き上げ ムーディーズの格付け 昨年末のフィッチに続き
米格付け調査会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス社は十八日、インドネシアの自国通貨建ておよび外貨建て国債の格付け(ソブリン格付け)を現在の「Ba1」から、投資適格となる「Baa3」に一段階引き上げたと発表した。昨年十二月のフィッチに続く、投資適格への格付け引き上げ。欧米系格付け機関三社のうち、スタンダード&プアーズ(S&P)も近く追随するとみられる。アジア通貨危機勃発後の一九九七年十二月に外貨建て国債の格付けが「Baa3」から「Ba1」に引き下げられて以来、約十四年ぶりの投資適格となる。欧州の先進国への格下げの動きが続く中、経済成長が続く新興国の雄としての存在感を示した形だ。
格付け見通しは「安定的」。ムーディーズ社は昨年一月にも格付けを引き上げていた。
今回の決定の理由として、政府の財政状況が「Baa」の水準に匹敵する状態が続くとみていることのほか、大規模な外的ショックに対する経済成長の回復度合いや金融システムの健全化などを挙げた。世界経済の不透明性が高まっているにもかかわらず、インドネシア経済は中期的に高成長を続ける見込みと指摘。資金の流入も続き、財政収支も改善し続けており、財政赤字も減少し、より高い格付けの国を上回るほどの財政状況と評価した。
今後、一層の引き上げに向け、財政収支の一層の健全化や価格の安定化、インフラのボトルネック解消への取り組みなどが鍵になると指摘。また、格下げになり得る要因としては、不適切な政策などに起因する公的債務の増加や外貨準備高の減少、価格統制の失敗などを挙げた。
同日のインドネシア証券取引所の総合株価指数は格付け引き上げを好感し、前日比二三・三七三ポイント(〇・五九%)上昇の三九七八・一二八で取引を終了。同日のジャカルタ外国為替市場のルピアは、対ドルでそれまでの九二〇〇台から九一〇〇前後までルピア高に触れた。
大蔵省のラフマット・ワルヤント債務管理総局長は、格付けの引き上げが資金調達コストの低減につながるとの見解を示した。
◇イは中国より魅力」 フィッチ社幹部
昨年末にインドネシアの格付けを投資適格に引き上げた格付け会社、フィッチ・レーティングス社のアンドリュー・スチール・アジア太平洋地域企業格付け担当部長は、米国の投資家から中国とインドネシアに関する質問を受け、「インドネシアは中国よりも魅力的な国かもしれない」との見解を示した。地元紙が報じた。
同氏は現在の格付けが「BBBマイナス」のインドネシアと「Aプラス」の中国を比較。中国の管理体制への不安や、中国の社会主義市場経済の現状などを例に挙げ、「インドネシアは中国と比べ、民間企業のマーケットが数段発展している」と語った。
また、アジア通貨危機の苦い経験から、リスク管理や安定した資産運用のために必要な知識を学んでいるとインドネシアを評価した上で「半年前、投資家は中国に興味を引かれていたが、今はインドとインドネシア。特にインドネシアに多くの関心が寄せられている」と投資家たちの意識の変化を指摘。さらに、中国は一時は二桁も記録した高い経済成長率を維持する中、上昇するインフレへの対策を迫られている点にも言及し、「比較的緩やかな経済成長率とインフレ率を維持するインドネシアは、企業の成長を促し、投資家にとって魅力的な地域となっている」と語った。