「やり残したことばかり」 国際交流基金 小川さん帰国へ
2回目のインドネシア駐在を終え、今月帰国する国際交流基金ジャカルタ日本文化センター所長兼東南アジア総局長の小川忠さん(57)。1989〜93年のジャカルタ駐在と今回(2011〜16年)の約20年間で何が変わったのか、文化的な側面からインドネシアの印象を振り返ってもらった。
女子大生を見るのが一番早い。ジルバブをかぶっていた人は当時1割ぐらい。今回来てみたら7〜8割になっている。イスラム意識が活性化し、ライフスタイルがよりイスラム的になった。文学でも映画でもイスラムがテーマのものが増え、食事ではハラルかどうかをより気にするようになった。
やり残したことは多い。インドネシアの小中学校、高校は約8割が教育文化省の管轄で、2割弱が宗教省の管轄。教育文化省とは日本語のプログラムなどで交流があるが、宗教省とは交流協定がなく、宗教省管轄の学校で日本語学習などを広げられなかった。辺境地や貧困層については宗教省の学校の方が一定の役割を果たしている印象があり、今後交流を進めていきたい。
インドネシアは、日本の好感度が高いが、その理解はまだ浅い。これは中国や韓国の対日認識とは逆。理解度の底上げを図り、知日派を育てていかないといけない。
日本への留学生を増やすことは大切だが、国費には限界があり、私費留学を増やすことが重要。円安ということもあり、日本への留学はシンガポールやオーストラリアに比べて費用が安くて済む。まだ、「日本は生活費が高い」と思い込んでいるインドネシアの人は多い。
日本に戻ったら、内向きになりつつあると言われる若い人たちが、インドネシアをはじめとして東南アジアやアフリカに出て行くような仕掛けをしたい。と同時にインドネシア語やアジアの言語を勉強する人が増えるよう努力したい。
(田嶌徳弘)(談)
ジャカルタ日本文化センター所長
【プロフィル】 小川忠(おがわ・ただし) 1959年神戸市生まれ。早稲田大学教育学部卒後の82年、国際交流基金採用。89〜93年、ジャカルタ日本文化センター駐在、98〜2001年、ニューデリー事務所長。「インドネシア 多民族国家の模索」(岩波新書)、「原理主義とは何か 米国、中東から日本まで」(講談社現代新書)など著書多数。