紛争なきアジア「EYES」 5カ国専門家、ジャカルタで交流 国際交流基金プログラム
国際交流基金アジアセンターは、紛争のないアジアをつくるための人材育成プログラム「EYES(アイズ)」を開始する。各国での研修を通じて未来のリーダーとなる若い人材を育て、草の根レベルで持続可能な平和構築を目指す。31日と1日にはジャカルタで、異なる宗教的背景を持つ5カ国の大学教授ら専門家が集まり、プログラム実施に向け意見交換や交流が図られた。
EYESは宗教的な対立などから生まれる紛争を世界共通の課題と捉え、長期的な視点で解決しようと発案された。2020年まで継続して行われ、25〜35歳程度の若い人材が対象。
初回はインド、日本、フィリピン、タイ、インドネシアの5カ国から2人ずつが参加し、9月にインドで開催予定。紛争解決のリーダーを育てる教育機関などを5日程度の日程で訪問する。参加者はプログラムでの経験を元に各国で平和構築活動に取り組む。参加者の例として、プログラムの担当者は「作家やブロガーなど、発信力のある若手」に期待する。
31日午後には中央ジャカルタのグリヤ・グスドゥルを訪れ、故アブドゥルラフマン・ワヒド(通称グスドゥル)第4代大統領の長女アリッサ・ワヒドさんや、多様な価値観を尊重したグスドゥル氏の考えを学び実践する「グスドゥリアン」らと交流した。ワヒド大統領は在任中、国内の華人の復権を進めるなど、宗教の垣根を越えた人々の融和を志していた。
1日に南ジャカルタの国際交流基金ジャカルタ日本文化センターで行われた会議ではアリッサさんをはじめ、各国の専門家がそれぞれの国の宗教事情などを解説し、意見交換した。
アリッサさんは亡き父の意思を継ごうと現在、全国100以上の都市で千人を超えるグスドゥリアン・ネットワークを構築し、「グスドゥルの役割を皆で埋めよう」と人権活動や農業・漁業支援など多方面で活動する。
EYESの目指す人材育成について、「グスドゥリアン・ネットワークでも学生など若者を対象に、社会を動かす未来のリーダーを育てる活動をしている」と共感。そのうえで「多国間からなるEYESはより大きな影響力を持つだろう」と評した。
フィリピン大学のテルシタ・マセダ名誉教授はミンダナオ島での政府と反政府武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平プロセスについて説明。「世界各地で起きている紛争には類似点がある。国単位でなく地域単位で問題を見つめることで、より革新的な解決法を模索したい」とEYESに期待を寄せた。(木村綾、写真も)