土壇場で回避 アピンド提訴取り下げへ  ブカシの最賃デモ

 西ジャワ州ブカシ県の最低賃金をめぐり、経営者協会(アピンド)と労組が対立していた問題で、アピンドが行政裁判所に今年の最賃の無効を求める提訴の取り下げを約束したことで十六日、労組が呼び掛けていたブカシ県のEJIP(東ジャカルタ工業団地)、ジャバベカ、リッポーチカランの三工業団地で予定されていた数万人規模のデモが回避された。実際に提訴を取り下げた場合、昨年の西ジャワ州知事決定に沿った最賃の適用が確定することになる。

 デモのコーディネーターのオボン・タブロニ氏らによると、デモに先立つ十五日、アピンドの西ジャワ支部、ブカシ労働局、労組の三者に、工業団地の入居企業などのインドネシア人社員が加わり、ジャカルタのホテルで協議が行われた。
 警察の仲介の下、(1)訴訟以外で問題解決を図る(2)アピンドは加盟企業との調整を行う(3)十六―十九日のデモは中止する(4)十九日にアピンドが提訴取り下げに署名する―ことで合意。十六日夜時点では、アピンドは提訴の取り下げには時間がかかると説明。関係者は「実際の提訴取り下げの時期については十七日、幹部で会合を行う予定だ」と話した。
 関係者によると、問題の発端は昨年、ブカシ県、経営者、労組の代表による三者協議の際に、組合が要求した賃上げ幅を飲めなかったアピンド・ブカシ支部が退席した状況で、最賃が決定されたこと。
 アピンド・ブカシ支部は西ジャワ州バンドンの行政裁判所に最賃の取り消しを求め提訴した。これに対し、金属労連(FSPMI)、全国労働者連合(SPN)ら労組団体は十一日、西ジャワ州ブカシ県チビトゥンにある丸紅系の工業団地「MM2100」で入居企業従業員を含む一万人規模のデモを行った。
 ブカシ県の最賃は百四十九万千八百六十六ルピア、セクター2(繊維)で百七十一万五千六百四十五ルピア。セクター1(電機、自動車など)で百八十四万九千九百十三ルピア。昨年のインフレ率三・七九%を大幅に上回る前年比一六―三一%の大幅増となった。

■休業か操業かで分かれる
 十六日の午前五時ごろ、EJIP交差点前では、金属労連組合員約二百人が集会を開始。警官約百人が警備に当たったが、同八時半ごろに解散した。オボン氏は、場所選定の理由について「工業団地が密集した地域で、組合員がたくさんいるため」と説明した。
 ジャバベカ工業団地では、開所式を予定していた日系入居企業が式典の時間を午前六時開始に前倒しするなどの措置が取られた。最終的にデモは行われなかったため、普段と変わりなくほぼすべての入居企業が操業。午前八時ごろには従業員がいつもと同じように通勤する姿が見られた。
 リッポー・チカランの工業団地警備担当者によると、デモは発生しなかった。
 工場の対応は休業か通常通り操業するかで分かれたという。工業団地内で働くインドネシア人男性(三五)は「(工業団地周辺を通る)ラヤ・チバルサ通りは今日はいつもより空いている」と話した。 
 日系印刷関連企業の役員は「ジャカルタ―チカンペック沿いの高速道沿いの工業団地に工場を構える日系企業は、日本に製品を輸出しているところも多い。対ドルでルピアが高くなってきていることと合わせて、賃金の上昇は、企業にとってコスト増の痛手になる」と語った。
 開発経済などを通じたインドネシア地域研究を行っている、京都大学東南アジア研究所の水野広祐教授は「インドネシアでは、人々の賃金水準が最低賃金近傍に集中しており、最賃と賃金がある程度連動している現状がある。労組で結集し、最賃交渉で主張することが、人々にとり重要な賃上げの機会になっている」と語った。

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