反テロ法を改正へ 大統領 被疑者の予防拘禁強化 イスラム団体 誤認逮捕を懸念

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は19日、サリナデパート前爆破テロ事件を受け、反テロ法(2003年法律第15号)の改正を検討すると発表した。2002年10月のバリ島爆弾テロ事件直後に制定された同法で被疑者の予防拘禁が可能になり、過激派組織の摘発に一定の成果を挙げてきたが、法改正でテロの予兆と判断した場合、不審者の摘発を強化する考え。これに対し、イスラム団体などからは誤認逮捕につながると慎重意見も出ている。

 閣議にはズルキフリ・ハサン国民協議会(MPR)議長、アデ・コマルディン国会(DPR)議長、アリフ・ヒダヤット憲法裁長官、ハッタ・アリ最高裁長官、関係閣僚らが出席した。
 ルフット・パンジャイタン政治・法務・治安調整相は、テロの予兆とみられる不審な動きへの予防措置を講じるためには法改正が必要だと強調。2年間の予防拘禁を認めるシンガポールやマレーシアを参照し、新条項を盛り込むとの方針を示した。
 アデ国会議長は「法改正には時間がかかるため、まず政令で対処し、国会が政令案について協議、承認することになる」と説明。反テロ法改正は別途審議していく方針だ。
 イスラム団体を統括するイスラム学者会議(MUI)のマアルフ・アミン議長は、法改正でテロ防止策を強化することに賛意を示したが、テロ関与の嫌疑をかけられた者の予防拘束強化には反対し、「摘発強化より宗教対話を通じて過激思想の拡散を阻止すべきだ」と訴えた。
 これまでバリ島爆弾テロ事件直後に設置された国家警察対テロ特殊部隊(デンスス88)は、過激派構成員の身柄をかくまった者などを逮捕した後、過激派とは無関係だったと誤認逮捕を認める事例が頻発してきた。
 著名弁護士のトドゥン・ムリヤ・ルビス氏は、地元メディアに「法改正は短期的な効果はあるかもしれないが、問題解決にはならない」と指摘する。テロが発生した米国やフランスなどと同様、テロ再発に対する不安は高まっているが、治安維持や法順守は人権保障が前提だと強調。予防拘禁を強化することでスハルト政権の強権体制復活につながる恐れもあると懸念を示した。
 現行の反テロ法は、バリ島爆弾テロ事件直後に発令された反テロ緊急政令が基になっている。半年後の03年4月に反テロ法に格上げし、逮捕状なしで被疑者を予防拘束し、最高半年の拘置を認めている。
 スハルト政権下で、イスラム強硬派や反政府運動の封じ込めに乱用され、同政権崩壊後に廃止された破壊活動防止法に代わる法律として採用。アフガニスタンやパキスタン、フィリピンなど近隣国から流入し、テロを起こした地下組織の摘発に運用してきた。他にもマネーロンダリング(資金洗浄)などの容疑でテロ犯を摘発している。(配島克彦)

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