厳しい経営環境反映 進出日系企業調査 ジェトロ
日本貿易振興機構(ジェトロ)は「2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の調査結果を公表した。うち在イ進出日系企業の回答では、経済成長の鈍化から、今後の事業展開、収益見通しなどで、前回よりネガティブな回答が増加、15年に3社に1社が営業段階での赤字を見込むなど厳しい経営環境が浮き彫りとなった。
【今後1〜2年の事業展開】「拡大する」と答えた在イ企業の比率は51・9%で前回調査より15・4ポイント低下。ASEAN全体の進出日系企業の54・2%(6・1ポイント減)を下回った。
【15年の営業利益】黒字見込みの企業が56・3%と前回より4・4ポイント減少、逆に赤字を見込む企業が8・2ポイント増の32・3%と3社に1社が赤字になる見通し。
利益水準も、営業利益が「改善した」と答えた企業は35・2%で、前回より10・8ポイント低下した。逆に「悪化した」と答えたのは35・2%と前回の23・4%から12ポイント近く増加し収益面で大きな影響を受けた。営業利益が悪化した理由は「現地市場での売り上げ減少」(68・4%)、「人件費の上昇」(51・1%)など。
【16年営業利益見通し】「改善」と答えた企業が48・2%と約半分に達し、調査対象国全体の44・8%を上回った。「現地市場での売り上げ増加」(77・1%)、「生産効率の改善」(46・8%)などを理由に挙げる企業が多かった。
【経営上の問題点】多くの企業が「従業員の賃金上昇」を挙げた。特にインドネシアでは80・5%と、5社のうち4社が「賃金上昇」を挙げ、ここ数年続いていた大幅な賃金の上昇が日系企業に大きな負担となっていることを裏付けた。
「賃金上昇」を問題点として挙げた企業の割合は、中国に続きインドネシアが2番目だった。「従業員の質」を課題に挙げる企業が半数以上(58・7%)あり、労務問題への取り組みが経営の鍵となりそうだ。
インドネシアは貿易制度や通関に課題が残る。具体的な問題点を指摘する質問では、「通関に時間を要する」、「通関手続きがはん雑」の回答がそれぞれ58・7%、57・9%と対象国で最も高い比率となった。多くの日系企業が輸出入手続きに問題があると指摘した。「対ドル為替レートの変動」(70・8%)や、「通達・規則内容の周知徹底が不十分」(49・2%)などの回答も高かった。(平嶋健人)
◇1987年から毎年実施し、今回29回目。アジア、オセアニア計20カ国・地域に進出する日系企業が対象。昨年10〜11月に実施し、全体で4635社が回答。在イ企業は946社のうち397社(製造業232社、非製造業165社)が回答。