ジャカルタに超高層ビル 111階、638メートル 華人実業家トミー氏が立案
ジャカルタに高さ六百三十八メートル、百十一階の超高層ビルを二〇二〇年までに建設する計画が浮上している。予定地は南ジャカルタ・スマンギのスディルマン・セントラル・ビジネス地区(SCBD)で、同地区の開発を手掛ける大物華人実業家トミー・ウィナタ氏が立案。現存する世界のビルの中ではドバイのブルジュ・ハリファ(八百二十八メートル)に次ぐ高さになり、成長目覚しいジャカルタのランドマークにしようとの狙いだ。
計画されているのは、オフィスビルや高級ホテルなどが一体となった複合商業ビルで、名称は「シグネチャー・タワー」。五月にオープンする世界で最も高い電波塔の東京スカイツリー(六百三十四メートル)よりも四メートル高く、インドネシアで最も高いビルの中央ジャカルタ・ドゥクアタスの「ウィスマ46」(高さ二百五十メートル、四十八階、一九九六年完成)の約二・五倍。二〇二〇年までに完成が予定されているビルを合わせると世界で五番目の高さになる見込みという。
超高層ビルの建設計画を立てているのは、南ジャカルタ・スマンギのSCBDの開発を手掛けるダナヤサ・アルタタマ社。
同地区開発当初から主要ビルとなる超高層ビルの建設を計画していたが、最初はマレーシアのペトロナス・ツインタワー(高さ四百五十二メートル、八十八階建て)と同程度の高さを想定していた。
しかし、台北101(高さ五百九メートル、百一階、二〇〇四年完成)を上回るものを目指そうと百十一階へと引き上げたという。総工費百億ドルを投じ、総床面積も五十万平米と三十八万平米の台北101を上回る。
ビル最上部の外形はパイナップルの葉をイメージした奇抜な形。低層階はショッピングモールで、パシフィック・プレイスと通路で連結する。中層部はオフィス、高層部は高級ホテルを構え、展望台から首都圏全体を見下ろせるようにするという。
また毎分千八メートル(時速六〇・四八キロ)の高速エレベーターを完備。八十八階付近に地震や風圧による振動を緩和するため、八百トンのマスダンパー(衝撃吸収装置)を設置する。
建設計画を進めるダナヤサ・アルタタマ社は、アルタ・グラハ・グループを率いるトミー氏やスギアント・クスマ氏らが株式を保有するジャカルタ・インターナショナル・ホテルズ&デベロップメント(JIHD)社の上場子会社。ほかにインドネシア人投資家が五三・三%、外国人投資家が二〇・六%の株式を保有する。
■国家の威信かける
JIHD社のサントソ・グナラ副社長は、SCBDの開発当初からランドマークとなる高層ビルの建設計画があったと明らかにし、「ビジネスの側面だけを考えれば三十−五十階で十分だが、建設は国家の威信をかけるという目的もある」と強調。
地震が頻発する地域での高層ビル建設に懸念の声も上がっているが、同氏は「すでにバンドン工科大や日本の地震専門家への協力も仰いでいる」と語った。
総合不動産サービスのジョーンズ・ラング・ラサールのルーシー・ルマンティル氏は地元紙に対し、年率一〇−二〇%で拡大が続く不動産需要に対処するための「一つの解決策」と指摘、「発展を続けるインドネシアのビジネス地域の象徴になる」との見方を示した。
■首都中心の開発地区
ジャカルタ市街地の主要道であるスディルマン通りとガトット・スブロト通りに面したSCBDは、ダナヤサ社(一九八七年設立)が開発を進めてきた。
九三年にアルタ・グラハ・ビル、九五年にインドネシア証券取引所ビルが完工。〇一年には家電大型店「エレクトロニック・シティ」、〇七年には高級ホテルのリッツ・カールトン・ホテルを併設する複合商業施設「パシフィック・プレイス」がオープンした。
建設予定地はSCBDの中心部で、現在はレストランなどが入居する低層の建物などがあるSCBDロット6と呼ばれる区画。スディルマン通り側から見ると、リッツ・カールトン・ホテル・ワン・パシフィック・プレイス、その背後にあるツインタワーのパシフィック・レジデンスの裏側になる。
これまでインドネシアで超高層ビルや電波塔の建設計画は何度か浮上してきた。スハルト政権末期に着工したが、九七年以降、アジア通貨危機で頓挫していた中央ジャカルタ・クマヨランのジャカルタ・タワー(ムナラ・ジャカルタ、五百五十八メートル)は、メガワティ政権下の二〇〇四年四月、建設再開記念式典が開かれ、基礎工事が開始されたが、資金難で再び中断している。