ジャカルタに炭化炉を 環境に優しいごみ処理 低炭素廃棄物処理セミナー
物質を燃やさずに分解する「炭化炉」でごみの削減を――。環境保全機器や発電設備などを販売する宜興行工業インドネシア(本社・神戸)は炭化装置の製造・販売を手がけるCYC(本社・岐阜県)と協力し、ジャカルタ特別州内のごみ問題解決のため炭化炉の普及を目指す。
炭化炉は焼却炉と違い物質を燃やさないため二酸化炭素(CO2)の排出量が少なく、ダイオキシンなどの環境汚染物質も発生しにくい。プラスチックを完全に分解する際に発生する燃焼ガスはエネルギーとして、木材などの有機物は炭になり肥料や燃料など再資源として、それぞれ利用できるため、ごみの削減と3R(削減、再使用、リサイクル)活動にもつながるという。
課題はごみ処理規模。宜興行工業の黄武昭・製造部長によると、両社が取り扱う炭化炉の最大容量は7立方メートルで、1日当たり炭化できるごみは約8トン。これは4千人の住民が出すごみの量に匹敵する。大量処理に対応する技術はまだ確立されていないため、ジャカルタ特別州内に複数の炭化炉を設置し、中間処理場としての活用だけでなく既存処理場で前処理装置としての活用も目指す。
黄製造部長は「ジャカルタ内での大規模な焼却炉の建設は場所がなく困難。炭化炉を利用し州内でごみ処理ができれば、最終処理場の西ジャワ州ブカシ市バンタルグバンまでの輸送コストや埋立地不足の解消が期待できる」と話した。年内に実証用の炭化炉を設置できるよう、州政府と話を進めているという。
宜興行工業とインドネシアで低炭素ビジネス促進を担う団体「ALBI」は6日、中央ジャカルタのホテル「アートテル」で「低炭素廃棄物処理」セミナーを開き、炭化炉などを紹介した。ジャカルタ特別州のイスナワ・アジ清掃局長やエネルギー鉱物資源省、公共事業省の関係者らが出席した。
アジ局長は、最新技術の活用にはごみ処理コストが高まる可能性があるとしながらも、意欲的に取り組みたい姿勢を示した。同州では1日に6500〜7000トンのごみが排出される。北ジャカルタのスンタルやチュンカレン、マルンダなどに1日千トン処理できる中間処理場を建設する予定。
宜興行工業は昨年、低炭素技術で途上国に貢献する制度に基づいて経産省の補助金を受け、ジャカルタ特別州に炭化炉導入の提言をしている。
炭化炉 対象物への酸素供給をできるだけ減らし、燃やさずに熱で分解して炭化させる。プラスチックは完全に分解され、生ごみや木材などは炭となる。金属は灰にならず残ることを利用し、日本ではレアメタル(希少金属)など商用価値の高い貴金属の回収に使われている。今後は飛行機や車などに使用されている軽くて丈夫な素材「カーボンファイバー」の回収や、スーパーマーケットなどで賞味期限切れの食品を焼却処理する代替システムとして検討されている。(毛利春香、写真も)