回復力弱く5%成長 ルピア一時1万4900も ことしの経済展望 三菱東京UFJ銀勝田支店長

 12月の9年半ぶりの米政策金利引き上げを受けて2016年の世界経済は緊張の中で幕開けした。2年目を迎えたジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権はことしも経済面で厳しいかじ取りを迫られそうだ。三菱東京UFJ銀行の勝田祐輔・執行役員ジャカルタ支店長は、じゃかるた新聞とのインタビューで、ことしの成長率は前年に比べ若干持ち直すものの回復力は弱く「5.0%にとどまる」との厳しい見方を示した。通貨ルピアの下落基調も続き、年前半に1ドル=1万4900ルピアの安値を一時つける可能性があると語った。
                                  
 勝田支店長は、15年の成長率実績見込みについて4.8%と、リーマンショック直後の09年に記録した4.7%以来の低いものにとどまるとした。
 16年は、政権が昨年打ち出した一連の経済政策パッケージおよびインフラ投資など政府支出の加速などの効果で若干持ち直すものの、成長率を大きく引き上げる効果は期待できないとした。年前半と後半を分けると、経済政策の効果から「後半が前半より良くなるイメージ」を想定している。
 同行の昨年6月時点での予測は5.2%で、今回、それを0.2ポイント下方修正した。5.0%は政府(5.3%)、中銀(5.3〜5.7%)、直近の世界銀行(5.3%)の各見通しを下回るもので、厳しい見方といえる。
 回復力が鈍い理由として▽資源価格下落・中国経済の減速による資源部門の低迷▽13年半ば以降の利上げによる需要抑制と企業の慎重な投資姿勢——が「景気の重しになっている」とした。公共投資は昨年に比較して拡大が見込まれ、景気回復のけん引役となることが期待されるものの、政府の歳入不足がリスク要因だ、と述べた。 
 ただ、経済減速下でも、雇用環境の持続的な改善、最低賃金の上昇などを受け、個人消費は「意外なほど安定」しており、自動車を含む運輸・通信や外食・宿泊などが鈍化しているものの、食品、家庭用品、健康・教育などでは安定した伸びが続いており、国内総生産(GDP)の半分以上を占める個人消費の伸びが、全体の成長を下支えしていると分析した。
 昨年は大きく上下した為替については、ことしも対ドルの高値と安値で1400〜1500ルピアの差が生じる変動が大きい年になると予想。ルピアの動きは「米国の利上げ回数とそのペースに大きく左右される」としながらも、インフレ率格差からルピアはドルに対し下落基調にあるとし、年前半に一時1万4900ルピアの安値もあり得るとした。
 経済界が期待する中銀の利下げも不安定な為替相場や縮小しない経常収支の赤字などを考えると「なかなか金融緩和(利下げ)に踏みきれない」と述べた。
 リスク要因としては、資源価格の一段の下落と予想以上の中国経済の成長鈍化の2点を挙げた。
 国際収支面では、世界的な資源需要の低迷と価格安、インドネシアによる輸出規制の影響が当面解消する見込みは薄いとし、輸出は価格・数量の両面で軟調が続くと予想。
 貿易収支が黒字でも、経常収支の赤字基調は不変であり、国際収支の均衡のためには、海外からの直接投資(FDI)の拡大、インドネシアへの証券投資を促す政策の強化が必要だと指摘した。昨年7〜9月に株式を中心に流出超過に転じるなど海外投資家の資金フローの「不安定な動き」には引き続き注意が必要とした。
 インドネシアの対外債務については、他のアジア主要国に比べ債務の過剰感は薄く、対外債務の管理体制もしっかりしており、債務危機的な状況に陥る可能性は低いとの見方を述べた。 (西川幸男、佐藤拓也) 

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