【アルンアルン】迫られる金融リテラシー向上

 ジョコウィ大統領はことし6月、金融サービス庁(OJK)が計画するイスラム金融開発プログラム「大好きイスラム金融(ACKS)」の立ち上げに際し、「大きな潜在力があるインドネシアは世界のイスラム金融のセンターになれる」とイスラム金融開発に意欲を示した。
 これに先立ちOJKは5年間のロードマップ(工程表)を発表し、イスラム金融開発の重点として、▽資金調達の場としての資本市場の開発▽中小企業のアクセスの向上▽小口投資家層の拡充――の3点をあげた。
 しかしイスラム金融拡大の前提として、イスラム金融に関する理解を関係者・投資家すべての層で深める必要がある。なぜなら、ムスリムであっても「イスラム金融はわからない」というのが一般的なためである。
 インドネシアでのイスラム金融の歴史は浅く、1991年設立のムアマラット銀行が長らく唯一のイスラム銀行だった。イスラム金融の世界的な広がりを背景に、2002年に中銀が第1弾となる5カ年計画を作成したが、当時のイスラム銀行の資産規模は全銀行の1%に満たなかったため、5%達成が当面の目標となった。その後は順調に伸び、13年に4.9%とほぼ5%になったものの現在は頭打ちとなっている。
 イスラム金融を成長産業と位置付け、国際ハブとなることを標榜し政府主導の「トップダウン型」で育成を推進するマレーシアとは異なり、インドネシアは「ボトムアップ型」であるためイスラム金融の発展には時間がかかるというのが関係者の認識だった。
 今回のACKSプログラムで発展のアクセルを踏むことができるだろうか。
 しかしその前に、銀行貸出が国内総生産(GDP)の48%、債券残高は同14%という極めて小さい金融部門そのものの発展が課題である。
 なにしろ15歳以上の銀行口座保有率は36%という金融発展途上国である。「イスラム金融とは何か」という前に、「銀行って何」という人々の金融リテラシーの向上から始めなければならない。
 その一方で、金融機関側はイスラム金融特有の低い流動性やヘッジ手法の不足などの問題に対処するため、通常とは異なるリスク管理が必要となる。これは純粋にテクニカルな金融部門高度化の問題といえる。
 経済が低迷し成長戦略にも手詰まり感がぬぐえない中、小さすぎる金融市場は逆にいえば発展の余地ともいえる。
 さらに金融リテラシーの向上をイスラム金融によって進めることも可能といえなくもない。しかし、そのためには5%の壁よりはるかに高い法整備や商品開発などの壁がそびえたっている。(アジア経済研究所開発研究センター貧困削減・社会開発研究グループ長 濱田美紀)

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