最賃上昇幅を自動算出 今年より抑制の見込み 来年から全国でパッケージ第4弾
ダルミン・ナスチオン経済調整相は15日、経済政策パッケージ第4弾を発表した。各自治体が決めていた最低賃金(最賃)の決定プロセスを変更、インフレ率と経済成長率を基に自動的に上昇幅を算出する方式を、一部を除く全自治体で適用する。来年の最賃上昇幅は全体として今年より抑制されそうだ。
同相によると、新しい最賃決定システムは前年のインフレ率と経済成長率を足した値を最賃に掛ける。例えば今年のインフレ率が5%、経済成長率が5%だった場合、来年の最賃は今年比10%増となる。来年から8州を除く全土で適用する。
これまでは地方ごとに1年に1回算出する最低生活費(KHL)を基に最賃を決めていた。自治体ごとに上昇幅が違って予想が難しいほか、政治家が人気取りのために大幅に上昇させたりすることもあり、企業は雇用計画を立てにくかった。
特にここ数年は日系企業を含む製造業が集積するジャワ島で、インフレ率を大幅に上回る20%超えとなることが多かった。上昇幅の算出を透明化し、全国一律に適用することで、賃金上昇に対する企業の懸念を払拭(ふっしょく)して投資を呼び込む狙いがある。
新基準では来年の最低賃金は今年比10%程度の上昇が見込まれる。日系製造業が集積する西ジャワ州カラワン県(今年の前年比上昇率20.84%)や同州ブカシ県(同16.04%)などでは今年よりも上昇幅は低くなりそうだ。
ダルミン調整相は最賃決定過程変更の目的は雇用創出と労働者の福祉向上であると説明。賃金の上昇幅を抑えることで、企業がより多くの人を雇用できるという「失業者へのメリット」を強調した。
ただ実質的に賃金上昇幅を抑えることになるため、労働者側からは反発が出そうだ。政府は保健カードや教育カードなどの福祉を充実させるとしている。
除外となる8州は東・西ヌサトゥンガラ州と西パプア州、ゴロンタロ州、中部カリマンタン州、西スラウェシ州、マルク州、北マルク州。
経済政策パッケージ第4弾では一部の企業にインドネシア輸出信用機関(LPEI、別称=輸出入銀行)を通じ、中小企業や輸出企業に対し貸出金利を引き下げることも発表。漁業や農業などの約30社が対象で従業員2万7千人に上る。
海外への出稼ぎ労働者や、失業後に事業を始める人などへの零細事業者向け融資額も増やす。(堀之内健史、佐藤拓也)