イ政府と関係作り尽力 ジェトロ所長 富吉さん帰国へ 4年にわたり企業進出支援

 日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所の富吉賢一所長(51)は約4年間の任期を終え、今月末に帰国する。投資ブームによる日本企業の進出を支えたほか、日本とインドネシア双方向の貿易振興のため、インドネシア政府との関係作りに尽力した。帰国を前に4年間を振り返ってもらった。

 富吉さんは、日本企業の投資ブームが起きた2011年に赴任。消費拡大の目安とされる国民1人当たりの国内総生産(GDP)が3千ドルを上回ったことや、当時急激な円高が起きたことを背景に、インドネシアを選ぶ日本企業が増えた。「13年にはジェトロの支援を通じて年間150社以上が進出。ほかの仕事ができないほど、日本企業の対応に追われました」と当時を振り返る。
 ジェトロの11年「在アジア・オセアニア日系企業実態調査」のインドネシア進出企業の黒字比率は90%を超え、調査対象国のトップになった。「黒字が出ない企業は異常だった」と業績にも高成長国の勢いが反映された。
 14年の同調査では、11年調査と一転し、黒字企業の比率は約60%と、東南アジア諸国連合(ASEAN)平均よりも下がった。「稼げない国になった」。主な原因にルピア安を挙げ、今年に入ってからは景気低迷が輪をかけ「工場の稼働率を7割ほどに抑えている企業が多い」と分析する。

■10年後へ土台作りを
 富吉さんはインドネシアの今後について「短期的には年明けか、来年の第2四半期以降に景気が上向いてくる」と予想する。「そのためには、政府の財政出動しかない。政府自ら景気が良いと思わせなければ上向かない」と熱を込める。
 長期的な視点では、インドネシアの根本的な問題である貿易赤字の克服に向けた政策が鍵を握るという。政府が5年間で輸出を3倍に引き上げる目標について「日本が輸出国として成功するのに30年かかった。(ジョコウィ政権の)5年間では短すぎる。将来輸出国になるために、今はしっかりとした土台作りが必要」と述べ、「現在の政策が2024年以降のインドネシアを決める。うまくいけば間違いなく大国になる」と強調する。

■農産品・雑貨に手応え
 日本からインドネシアへの輸出振興として、農産品や雑貨などの足がかりをつかめたと話す。日本産のリンゴや梨、桃がインドネシアで買えるようになった。「日本産は価格が高くてもよく売れている」という。
 また、13年に開いた商談会では、日本製の文房具や家庭用品など雑貨の人気が高かったことも収穫だった。「事前の調査では、ほとんど売れないと思っていたが、予想に反して売れた」。付加価値のついた商品の需要が増えるなど、急速に市場が変わってきていることを実感した商談会だった。

■政府へ発信力強化
 赴任当初、インドネシア政府に対しジェトロの知名度が低くなっていたことにがく然とした。「商業省や工業省はジェトロと言っても会ってくれなかった」ため、二国間の貿易活動拡大に向け、政府との関係作りに力を入れた。
 ことし3月のジョコウィ大統領訪日では、ジェトロの石毛博行理事長との会談が実現。商業省の進める一村一品の輸出政策を支援する覚書を結び、ことしから本格的に動き始める。

■北スマトラが有望
 現政権の政策の柱である地方開発にも関心を持つ。
 プライベートも含め、国内20州を訪問した。現場を歩き、感じたことは地の利を考えた重点投資が必要なこと。「全ての地方に均等に投資しては、失敗する可能性が高い。最も有望な地域は北スマトラだ」
 今後、進出を検討する企業に対しては、「投資ブームは落ち着いたが、自動車産業を含め、まだまだ進出余地は大きい」と語る。
 最後に、インドネシアの邦人社会の格言である「『慌てず、焦らず、当てにせず、しかして、飽きずに、あきらめず』を胸に、覚悟して進出してほしい」と締めくくった。(佐藤拓也、写真も)

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