【アルンアルン】政権の基盤固めなるか

 この1カ月の間に、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の今後の政権運営を左右するような動きが立て続けに見られた。
 8月12日、政権発足後わずか10カ月で内閣改造が実施された。その目的は「政府を動かす」ことであった。それは、ライン官庁の大臣の交代が商業相だけだったのに対して、省庁間や国会との政策調整を担う調整相を4人中3人入れ替えたことに表れている。
 それと同時に、政治的に重要な意味をもったのが、内閣官房長官をアンディ・ウィジャヤントからプラモノ・アヌンに交替させたことである。アンディは、大統領選前からジョコウィを支えてきたブレーンであるが、与党第1党の闘争民主党からは「党と大統領の意思疎通を意図的に妨害している」と名指しで批判されてきた。
 ジョコウィは自らの右腕であるアンディを切り、闘争民主党元幹事長のプラモノをその後任に充てた。プラモノの任命は、彼の政党政治家としての人脈と経験を買ってのものである。ジョコウィは、側近を切ってでも政府と与党、なかでも闘争民主党との意思疎通の改善を優先したのである。
 ジョコウィは一方で、政権発足時には与党の反対にあったルフット・パンジャイタンの入閣を実現させた。政治・法務・治安担当調整相に就任したルフットは、元陸軍将校で地方首長時代からジョコウィと親しい関係にあった。昨年12月からは大統領首席補佐官として野党との交渉を担当するなど、中央政界に人脈のないジョコウィが最も頼りにしてきた人物である。
 その後任として、9月2日に大統領首席補佐官に指名されたテテン・マスドゥキもジョコウィの側近のひとりである。大統領補佐官室は、大統領の政治的リーダーシップを確立すべく2月に設置されたが、ユスフ・カラ副大統領はその権限が大きすぎると不快感を示すなど、廃止を求める声もある。しかしジョコウィは、大統領府を強化するという自らの意志を貫いた。反汚職NGO活動家でもあるテテンには、ジョコウィの最大の支持基盤である市民社会との連携という役割も期待されている。
 同じ日の夜には、国会第5党の国民信託党が野党から与党に鞍替えすることが発表された。同党が政権入りしたことで、連立与党の議席が国会過半数を超えた。今後の国会運営の見通しにも明るさが見えてきた。
 これらの動きはいずれも、ジョコウィが政権基盤の弱さを徐々に克服しつつあることを示している。ただし、これで大統領も政治的に安泰というわけにはいかない。連立与党がいつも政府の政策に賛成するとは限らない。連立与党が6政党に増えたことで、政権内での利害調整の手間はむしろ増えたし、限られたポストをどのように配分するのかも頭が痛い問題である。政権基盤固めは終わりのない問題なのである。(敬称略、JETROアジア経済研究所地域研究センター東南アジアI研究グループ長代理 川村晃一) 

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