「競争力向上する」「消費減速を懸念」 輸入増税 反発と歓迎

 23日に施行された財務大臣令で60分野にわたる広範な製品の輸入関税が大幅に引き上げられた。海外製品の輸入を抑え、国内産業の成長を促す目的。自由貿易協定を結んでいる日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国には適用されず、欧米などからの輸入製品が値上がりすることになる。飲料・食品業界や繊維業界は歓迎するが、物価上昇とさらなる消費減速を懸念する声も上がっている。

 「輸入税引き上げを受け、欧米からの輸入品が多い地場系ゴルフ用品店の出店が見合わせになった」。イオンモール・インドネシアの岡崎龍馬社長は突然の増税に困惑したように語った。同モール全体では欧米からの輸入は現時点でそれほど多くないが、一部店舗では値上げは避けられない。岡崎社長は「慎重に今後の影響を注視する」と話した。
 地元メディアによると多くの製品で輸入関税が2倍以上になった。特に食品・飲料で増税率が高く、加工肉が5%から30%に、コーヒーや紅茶が5%から20%、アルコール度数80%未満の酒類は150%になった。 
 衣服は15%が20〜25%になっており、欧米ブランド品は値上げとなりそうだ。6月に奢侈税が撤廃されたばかりの家電は10%から15%になった。
 増税となったのは主に消費財。バンバン財務相は輸入税引き上げについて、競争力の低い国内産業を強化するためと説明している。
 輸入税引き上げは物価上昇や購買力低下につながりかねないが、財務省財政政策センター(BKF)のスアハシル・ナザラ所長は関税を引き上げたのは国産で代用できる分野であると主張。「影響は確かにあるが大きくない」と話した。
 ただ国産の代替品があっても、供給が追いつかなければ価格が上がり、消費者が打撃を受けることになる。
 経済紙各紙は増税を23日付の1面トップで報道。業界の歓迎の声を紹介しつつも、「購買力の成長を妨げうる」(ビスニスインドネシア)、「(購買力低下で)今年の経済成長がさらに低下し、政府の経済成長の促進策と矛盾する」(コンタン)など疑問を呈する論調もあった。「輸入税は上げるのでなく、下げるべき」(飲料輸入・販売業者協会のアグス・シラバン会長)など輸入業者からは反発が出ている。
 輸入品の値上がりで価格競争力が増すため、国内業界団体は歓迎する。飲食料品製造業者協会(ガプミ)のアディ・ルクマン会長は「欧米からの飲食料品の輸入はかなり多く、国内の競争力は当然向上する」と述べ、さらなる育成策をとるよう政府に求めた。
 インドネシア繊維協会(API)のアデ会長は「他の国の安い製品から国内製品を守る要因となる」と歓迎。衣服など労働集約型の繊維業界では近年の賃金や電力の値上げで、より安価な海外製品に押され気味だった。
 経営者協会(アピンド)のハリヤディ会長は「国内業者を守り、輸入を代替することは支持する」と述べた。一方で国内で代替し、供給能力がある製品に限って増税すべきとの認識を示した。(堀之内健史)

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