数千億ルピアの不正撲滅か 税務伝票の電子化開始 依然虚偽伝票横行懸念も
財務省税務総局が1日からジャワ島とバリ島で開始した税務伝票の電子化。当局は電子化により、年間数千億ルピアに上る不正還付請求の被害総額を抑えられると期待する一方で、依然虚偽の税務伝票が横行すると不安の声も上がっている。
■半年で9342億ルピア
バンバン・ブロジョヌゴロ財務相は13日、税務伝票の電子化で、税金過払いによる還付金の請求金額が従来の書面方式よりも削減できると見込んでいることを明らかにした。同相は電子化で、虚偽の税務伝票の撲滅にもつながると期待を込めた。
当局によると、2014年下半期に認定された虚偽の税務伝票は、ジャカルタ特別州だけで499件。被害総額は9342億ルピア(約87億円)に上った。西ジャワ州でも841件、3750億ルピア(約35億円)に達した。
■架空の会社を利用
税金の虚偽申告行為について、主に二つの手法があるといわれている。一つは税務伝票を偽造し、税金の過払いを申告、還付を受ける手法。監査制度が確立されて以降、被害額は減少している。
現在の主流は架空の会社名義で取引履歴を作り、過払い税金の還付請求をする手法だ。2007年ごろから被害が増え始めた。
週刊誌テンポが架空の会社で税務伝票を作成する業者の実態を報じた。
南ジャカルタの税務署に税務伝票の電子化申請手続きで訪れたと語る女性。不審な言動が多かった女性宅を税務署員が捜索したところ、架空企業6社の登記が見つかったという。実在しない会社の電子化手続きを済ませることで、今まで同様に虚偽の税務伝票を作成する狙いだった。
■正確な企業数の把握を
非営利機関のインドネシア・租税分析センター(CITA)のユスティヌス・プラストウォ代表は、税務総局がまだ税務伝票の登録に関する正確なシステムを確立できていないため、「(税務伝票が)書面から電子化しても、不正の撲滅はできない」と指摘する。
さらに、「(税務総局は)国の税収を試算するために必要となる納税企業数を把握できる資料を持っていない」と指摘している。世界銀行は3月の四半期報告会で、今年の政府予算について「税収見通しが甘い」と改善を求めている。(佐藤拓也)
税務伝票の電子化
財務省税務総局は7月1日からジャワ島とバリ島で日本の消費税に相当する付加価値税(PPN)納税額の算定元となる税務伝票(インドネシア語はファクトル・パジャック)の電子化を義務づけた。年間売上高が48億ルピア以上の企業はPKP(付加価値税課税業者)として登録が必要になる。登録企業は取引ごとに発生する税務伝票を集計して納税額を計算する。