278人が日本に出発 看護師・介護士第8期 「心の友」全員で合唱
日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づく看護師・介護福祉士受け入れ事業の候補者278人が10日、南ジャカルタの駐インドネシア日本大使公邸で開かれた壮行会に出席した。今年で8回目となる候補者は10日に第1陣が日本に出発、第2陣は11日に出発する。
出席したのは看護師候補者が66人、介護福祉士候補者が212人。候補者は、昨年11月から今年5月までの6カ月間、国内で日本語研修を受けた。渡航後に大阪府と愛知県に分かれて、さらに6カ月の間日本語研修を受け、日本語に磨きをかける。その後、全国各地の受け入れ先の病院や施設に派遣され、働きながら国家試験に備えて勉強をする。
壮行会では、候補者を代表してインドラワン・グナウィバワさんが「今日集まった候補者は家族のようなもの。日本では、困ったことがあればお互いに助け合い、『住めば都』の精神で頑張ります」とあいさつした。
谷崎泰明大使は「日本語を習得するには日本人の友人を作るのが一番。ぜひ、渡航後も日本の人々と協力しながら仕事に勉強に励んでください。いってらっしゃい」と激励した。
壮行会の最後に、インドネシアで愛唱されている五輪真弓の「心の友」を候補者全員が日本語で歌った。
2008年の事業開始以来、専門的な日本語を使用した国家試験の合格率は、看護師候補者は約1割、介護福祉士は5割に満たない。日本政府は、試験時間を増やしたり、問題の漢字にふりがなを付けるなど優遇措置を実施。また、看護師は3年、介護福祉士は4年という在留期間も、一定の条件を上回れば再受験のため1年の在留期間延長を認めるなど試行錯誤を続けている。
2015年度介護福祉士国家試験では、同事業派遣によるインドネシア人初受験者の合格率が、過去最高の65・4%を記録。日本人を含めた全体の合格率61%を超えた。労働者派遣保護庁(BNP2TKI)のヌスロン・ワヒド長官は「この事業で、国際的に通用する人材育成が成功している証拠だ」と話す。
だが、ある介護士候補者は「家族のそばで暮らしたいので、国家試験に受かっても日本には残らずインドネシアに帰る予定だ」と話す。難関の試験に合格しても、インドネシアを含む外国人看護師・介護福祉士が、日本に定着できていないという問題も残っている。(藤本迅、写真も)