市場規模を下方修正 787万台→700万台前後に 浮揚の鍵はレバラン商戦 ホンダ二輪井沼社長に聞く
国内二輪シェアの約7割(今年1〜4月)を占める二輪車製造・販売のアストラ・ホンダ・モーター(AHM)は、今年の国内二輪市場規模を昨年並み(787万台)から700万台前後に下方修正した。レバラン商戦を契機に消費マインドは回復するのか。AHMの井沼俊之社長に今後の見通しを聞いた。
――1〜4月の国内の二輪市場は昨年比21%減の213万台だった。
第1四半期は潜在的なニーズはあったが、ガソリンや生活必需品の値上がりにより、買い控えムードが拡がり、販売台数が落ちた。
市場在庫がかなり膨らんでいるため、5、6月はいったん生産台数を落とすのは止むを得ない。
――今後の見通しは。
今年は本当に不透明。来月中旬に始まるラマダン(断食月)からレバラン(断食明け大祭)までのいわゆるレバラン商戦で消費が盛り上がるかどうかに左右される。
二輪に限らず各業界で販売減により在庫が増えている。減産により残業代が減ったり雇用調整が始まったりするなどして、購買力が減少しさらに消費が冷えるという構図がすでに見られる。
政府の適切な予算執行や、頭金規制緩和などの景気刺激策がレバラン商戦に間に合って消費マインドが戻れば、在庫調整をしていた企業が生産を増やす好循環が生まれ、下半期の販売回復が期待できる。
逆に刺激策が間に合わなければ企業がさらに生産を抑え、深刻な悪循環に陥る可能性が高い。6月が今年の販売台数を左右する節目になるだろう。
そのため今年の国内二輪市場規模は700万台から大きく上下する可能性がある。
――各地域の動向は。
低迷している資源価格が回復するとは考えにくく、輸出での景気回復は難しいためジャワ島以外はしばらく期待はできない。内需を支えるジャワ島がどこまで回復するかにかかっている。
各国間の調整課題
――東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体=AEC=に向けたホンダの二輪事業の戦略は。
これまでホンダは需要のあるところで生産・販売し、それぞれが他国とあまりやりとりせず、自国完結型でやってきた。そのため、各国間の調整には積極的でなかったが、自由化にともなって連携を深めていく必要がある。
ASEANとインドを合わせたホンダの生産能力は約1500万台で、域内の需要を満たすには十分だ。だが、各国ごとに生産能力が余っているモデルがある一方、足りないモデルもある。各国間でモデルを補完し合い、域内トータルで供給能力と需要を合わせていくことが課題だ。AECへの対応は難しい反面、チャンスだと考えている。
――その中で売れ筋のビートのフィリピンへの輸出を始めた。
東南アジアは各国で好みが大きく違っている。例えばビートはタイではほとんど売れず、今では販売していない。
フィリピンはインドネシアに比べて二輪市場は未成熟でこれからインドネシアと同じようにオートマチック(AT)車の需要が伸びる。たまたまAT車の低価格分野でビートがニーズにぴったりあったため輸出を始めた。
他の車種のフィリピン以外の国への輸出の可能性もある。(堀之内健史、写真も)
◇ 【プロフィル】 いぬま・としゆき 1958年4月16日生まれ、東京都出身。82年本田技研工業入社。国内二輪営業部、アジアホンダモーター(タイ)二輪事業GM、本社二輪営業部長を経て、2013年から現職。