農園で住民虐殺 開発業者が自警団動員  ランプン州と南スマトラ州

 スマトラ島のランプン州と南スマトラ州のアブラヤシ農園開発をめぐり、開発業者と住民の間の土地紛争が激化し、業者が動員した自警団が立ち退きを拒否する住民を虐殺する事件が続発している。政府は真相究明委員会を設置し、事件解明に乗り出したが、大規模な農園開発に絡む業者や治安当局、地方自治体の癒着、不透明な法執行など問題は山積している。

 発端は、退役軍人サウリップ・カディ氏率いる住民代表が国会第三委員会(法律・地方自治・人権担当)で行った告発。自警団が農園内の住居を破壊し、住民を惨殺する様子を収録した映像を上映、これまでに住民三十人が農園開発会社が雇ったチンピラに虐殺されたなどと主張した。
 アブドゥルラフマン・ワヒド政権退陣とともに失脚し、近年は目立った活動もなかった元改革派将校サウリップ氏らの訴えを疑問視する声も続出。映像は動画投稿サイトにも投稿されたが、「虐殺される様子が収録されたのは農民ではなく農園開発会社の従業員」「タイの農園の映像ではないか」との指摘も出たほか、被害者数などをめぐっても議論が噴出した。
 国会代表はランプンを訪れ、地元首長らと会談し、ゴルカル党など連立政党からも事件究明を訴える声が続出。政府は法務人権副大臣が率いる真相究明委員会を設置し、現地調査に乗り出した。国家警察は近年、アブラヤシ農園開発をめぐる対立で虐殺事件が続発していることは認めたが、これまでの死者は八人のみと発表した。
 虐殺事件の真相をめぐり、国家人権委員会は現地で住民らの聞き取り調査を実施。これによると、今年四月、南スマトラ州オガン・コメリル・イリル県ムスジ郡の農園で、農園開発会社スンブル・ワンギ・アラム社や同社が雇った自警団と住民が衝突、住民二人が虐殺された。これに怒った住民が同社従業員と自警団員計五人を殺害した。
 ランプン州ムスジ県タンジュン・ラヤ郡では、開発用地の収用をめぐり、二〇〇九年以降、農園開発会社シルファ・インフタニ社と住民の衝突が続発。今年十一月、用地買収で住居が取り壊された際、自警団が住民一人を殺害、数人が重軽傷を負った。
 ムスジ県の別の場所では、バラット・スラタン・マクムル・インフェシンド社と住民の対立が激化し、住民一人が殺されたとみられる。
 人権委のヌル・コリス氏は、今回注目を集めた三つの事件は氷山の一角で、同委が受理する土地紛争に絡む暴力事件の報告件数は毎年数千件に上ると指摘。以前は軍人が多かったが、近年は住民と接する機会の増えた警官が関与するケースが急増、昨年は七百八十件の暴力事件が報告された。
 土地争議も山積している。国土庁によると、一万三千件が未解決で、今年上半期だけで千三百件が新たに報告されたという。
 ランプンの非政府組織(NGO)法律監視調査所のレスメン・カダピ氏は、土地収用や住居撤去の執行で、警官ではなく自警団を動員するのは、衝突激化で発生する暴力事件の責任を免れるためだと指摘。「チンピラが勝手にやったと言い訳すれば法的に追及される恐れはなくなる。地方首長や捜査機関と結託した開発業者に対し、住民が立ち向かう術はない」と述べ、大規模な農園開発で使われてきた常とう手段の是非が現在問われていると強調した。

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