IS支援の摘発強化 10人逮捕射殺、世論味方に テロ対策当局 

 過激派組織IS(イスラミック・ステート)の浸透への懸念の高まりを受け、テロ対策当局は、ISとの関係が疑われる勢力の摘発を加速し始めた。この2週間ほどで逮捕や射殺は10人に上った。日刊紙コンパスの調査では、市民の大多数が対策強化を支持しており、政府は世論も味方に、法改正も含めた封じ込めを進める方針だ。                                                      
 警察は先月21日、南ジャカルタや西ジャワ州ブカシなどに住む5人を、25〜27日には東ジャワ州マランの4人を立て続けに逮捕。中部スラウェシ州パリギ・モトンでは今月3日、対テロ特殊部隊が銃撃戦の末、同州を拠点に活動する過激派組織「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」の構成員とみられる男を射殺した。男は手製の爆弾を身につけていたという。
 射殺された男以外の逮捕容疑は、ISへの参加募集や渡航支援などに関わったとするもの。反テロ法では武器準備や具体的な加害行為がなければ処罰対象にならないため、テロ資金規制法などを適用し、ISへの渡航支援を理由とした初めての摘発例となった。
 シリアに越境しようとしたとしてトルコで身柄拘束された16人のうち、送還された12人の取り調べも進め、勧誘活動の実態解明を急ぐ。

■反テロ法改正も課題に
 ISに絡む事件が相次ぐなか、市民の間でも危惧が広がっている。
 コンパスは先月27日にかけ、全国12都市に住む500人を対象に世論調査を実施。政府が検討する対策のうち、紛争地への渡航禁止には76.2%が賛成、21%が反対した。過激派への参加を助けるツアーを企画した旅行代理店に対する営業許可取り消しは85.8%が賛成、反対が11.4%。過激思想を広めるウェブサイトのブロックには89.4%が賛成し、反対は6.4%にとどまった。
 テジョ政治・法務・治安調整相は1日、国会幹部と協議。「ISの影響力拡大は大きな懸念で、反テロ法改正は喫緊の課題だ」と申し入れ、国会側も方針を受け入れた。臨時措置として、大統領権限で発布できる特別政令の起案も検討されたが、国会での手続きを重視するヤソナ法務人権相の意見も踏まえ、法改正に傾いたもようだ。
 テジョ氏は具体的な内容には踏み込まなかったが、罰則の強化に加え、ネット上での宣伝禁止やISに参加した市民のパスポート没収措置などの法制化を想定しているとみられる。
 ただ、早急な対策には反発も予想される。国家テロ対策庁(BNPT)からの要請を受けた情報通信省は先月末、「過激主義の拡散」を理由に約20のサイトを閉鎖したが、イスラムの一般的情報を発信しているだけのサイトやニュースサイトも含まれていたため、運営者が反発。ソーシャルメディアでも「『イスラム恐怖症』を助長する」などとの批判が広がり、現在では多くが復旧している。
 法学者のジムリー・アシディキ初代憲法裁長官は「BNPTが独自の視点で特定のサイトに疑いを持つのは正当な行為だ。だが、情報通信省はBNPTのパートナーである必要はない」と指摘し、慎重な判断を求めた。同省は反省を踏まえ、イスラム学者や民間を交えた検討委員会を立ち上げ、対応を検討する。(道下健弘、田村隼哉)

ーお断りー
 じゃかるた新聞ではこれまで過激派組織「Islami State」の表記に、日本語訳である「イスラム国」を用いてきましたが、インドネシアで広く信じられているイスラムとは異なります。この組織がイスラムを代表する国であるかのような印象を与えることを避けるとともに、当地で大多数を占める穏健派ムスリムの心情に配慮し、4月1日付紙面から原則的に「過激派組織IS(イスラミック・ステート)」と表記しています。

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