チラマヤ中止、新港は東へ 石油ガス設備に懸念 カラ副大統領が意向

 ユスフ・カラ副大統領は2日、西ジャワ州チラマヤ港の建設予定地を視察し、別の場所へ建設地を移動するとの意向を発表した。石油ガスのパイプラインや関連施設があり、船舶の航行や石油ガス生産への影響を懸念する国営石油ガス・プルタミナなど反対派の要求を聞き入れた格好だ。代替地は、チラマヤの東にある同州スバン〜インドラマユの間で選ぶ見込みで、日本政府が協力して進めてきた同計画は大幅な見直しを迫られる。 

 地元メディアによると、カラ副大統領は2日、東ジャカルタ・ハリム空港から、インドロヨノ・スシロ海事調整相やスディルマン・サイド・エネルギー鉱物資源相らとヘリコプターに乗り込み、上空からチラマヤ港建設予定地を視察した。この後、他の閣僚やプルタミナのドウィ・スチプト社長と協議し、建設予定地をチラマヤから東部へ移動させることで合意した。
 建設予定地沖にはプルタミナの北西ジャワ沖鉱区があり、石油と天然ガスを生産している。パイプラインは7本あり、船の航行に危険が生じたり、石油ガス生産に支障をきたしたりする懸念があるとして、プルタミナは先週末、政府に港建設計画の中止を要求した。
 カラ副大統領は視察後、「石油の掘削施設が多数あることを確認した。安全な場所を探す必要がある」と説明。「代替地は調査を経てから選定する。事業計画は初期段階にあり、場所を移動することは問題ではない。港の面積やコンテナ取扱量などは当初の案から変えず、建設計画は予定通り進める」と強調した。
 しかし、チラマヤ港を支持してきたジョナン運輸相は「すぐに再調査に取りかかるが、調査をやり直せば前回のように2年近くかかる」と大幅な遅れが生じる可能性に懸念を示した。
 チラマヤは工業団地が集積するブカシやチカンペックの北部にあり、物流費用軽減や渋滞緩和などが見込めるとして、ジョナン運輸相は1月にジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領へ中期開発計画に組み込むよう提言していた。
 建設中止には開発計画をまとめた政策指針に関する大統領令(2011年第32号)を撤回する必要があり、ジョコウィ大統領が最終的に決定を下す。
■日本側は要請継続
 日本政府関係者は「パイプラインと共存している港は他国にもある」と建設反対の理由に疑問を呈した。別の関係者は「まだ大統領の決定ではないので、チラマヤ港建設に向けて働きかけを続けたい」と話した。
 トヨタの現地製造法人トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシアの野波雅裕社長(ジャカルタ・ジャパンクラブ=JJC=理事長)は「インドネシアの競争力強化のためにも、早く新港建設を進めてほしい」と語った。
 チラマヤ港はユドヨノ前政権が日本政府と協力で合意した首都圏投資促進特別地域(MPA)プロジェクトの中でも最重要事業に位置付けており、日本側も円借款の活用を想定。タンジュンプリオク港への貨物の集中を分散させ、首都と工業団地を結ぶジャカルタ〜チカンペック高速道の慢性的な混雑の解消にもつながると期待されていた。(堀之内健史)

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